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後立山裏銀座 奥黒部へ

■山行日:2017年09月20日(水)
■山:針ノ木岳
■目的:縦走
■ルート:針ノ木小屋(07:00)-針ノ木谷出合(09:00)-奥黒部ヒュッテ(14:30)
ほうほうのていで針ノ木小屋に辿りついた縦走初日の夜
地図を手に、明日の行動を検討していた

実は、この後のプランは、その日任せだった
なんとなく頭にあったのは、昨年の秋、初の裏銀座を歩いたとき
水晶小屋で意気投合した方の言葉だ

 「針ノ木谷はぜひ歩くべきです、黒部の秘境ですよ」

この言葉が深く残っていた

針ノ木谷から平の渡しで対岸へ
そして五色ヶ原から縦走で裏銀座、なんてどうだろうか
いや、2010年のルート、もう一度読売新道を詰めて
今度は、温泉沢ノ頭から下り、今年も高天原温泉に入るか

何れにせよ、針ノ木谷には下ろう、その後はそのとき決めればいいさ
朝食後、7割は針ノ木へ、3割は蓮華へと、宿泊者が散って行く中
ただ一人、針ノ木谷へと下り始める

左手に蓮華、正面には、赤牛岳から遥か槍ヶ岳まで望める
さぁ、明日の今頃、自分はどこに立っていて、何を見ているだろうか
今日は午後から荒れるはず、沢沿いは急ぐべきだ
下り始めの樹林を抜けると、徐々に沢が大きくなり
いつの間にかルートは完全な沢ルートとなった
この状況は想像していなかった、と云うより情報収集が甘かったぞ
こんな苔むした岩と、水量だったとは

カメラケースをザックに納めると、最悪水の中を歩く覚悟で進む
大きな岩を巻きそこね、滑った先の鋭利な岩に左膝をやられ
タイツの中で出血しているのが分かる

そこをカバーしながら不自然な歩きで下っていると
苔に足をとられ、水際で倒れた際に右膝を思い切りぶつけた
こりゃ、ちょっと動けないな、と戦意喪失のまま座り込んだ視線の先
下流を望むと、沢の先が落ちて、先が見えない
時間だけがどんどん過ぎる
谷底から風が舞上がり始める
厚い雲が陽射しを隠して行く
ふと見ると左岸に張ってるフィクスロープに気付いた
助かった・・・


ロープに頼りながらも、片足は沢に浸かり、どうにかやり過ごす
そんなことを繰り返しながら120分、ようやく針ノ木谷出合だ
そのマーキングを見ると、へなへなと座り込んでしまった


迫り来る岩盤、透明な沢、暗い樹林の巻きルート
針ノ木谷は、昨年出会ったT氏の言うとおり、秘境だったが
左膝の痛みが回復せず、その秘境を楽しむ余裕が無い
そんな状態で、右岸の高巻きルートのアップダウンが連続し
どんどん体力を消耗して行く




何が、五色ヶ原だよ、こんなコンディションだと
もしかすると、このまま黒部ダムへエスケープかもしれないぞ
果てしなく続くかのような針ノ木谷も、高巻きが終わり
広がった沢を、飛び石便りに右岸、左岸を繰り返し
やっとフラットになりかけた時、両足共にドボン




靴下を絞り、タイツを脱いで左膝を治療しながら考えた
五色ヶ原からの周回は、膝に不安があるので止めだ
読売新道から稜線へ登ろう
そして、温泉沢ノ頭から、高天原へ下ろう
ここまでも充分なアップダウンをこなして来たはずなのに
まだ、1400mも登って、800mも下るなんて
このときは、その厳しさを理解していなかった




黒部川沿いを、木組のハシゴに摑まり、アップダウン
両膝からの出血がタイツの中で不快極まりないが
それよりも、左膝の痛みが気になる




2010年よりも、ハシゴが修理されてあることにホッとし
雨が降り始める前に、小屋に着くことが出来た
テン場には、テント前室から顔を覗かせた、緑のキャップの女性
「明日は一緒に赤牛やっつけようねー!」 と大きな声と笑顔
サムアップで応えながらも、その底抜けな明るさに苦笑い




実は今回の山旅、どこで、どうプランが変わっても対応できるよう
テントを担いでいた、この奥黒部ヒュッテでは、テン泊のつもりだったが
両方とも靴の中がズブ濡れだ、どうしても乾燥室を借りたい
それに、もう雨が落ち始めている、今夜は小屋泊だ




一番風呂を頂いて、両膝にバンドエイドを貼って着替えると
降り始めた雨を眺めながら、缶ビール
相部屋の若いソロ男子に明日の予定を問うと
「双六までです、3時には起きるので煩かったらすみません」
双六だって?
何気ない表情で返す彼が、まぶしくて、ビールを飲み干した




ここより先は、黒部川が滔々と流れるだけ
最奥地である、奥黒部ヒュッテの夜の闇は、どこまでも深い
夜半、激しく降る雨音で眼が覚める
明日はどんなドラマが待っているのだろうか




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