

15年前は同じように真砂沢から登って来て、テントを設営すると
あそこに見えている池ノ平山まで登ったんだ
なんと若かったことだろうか
あの日の記憶に浸っていると、いつの間にか浮き始めた雲海が染まり
そのシーンに、遠き北アルプス最奥部にいることの寂しさがしんしんと
あっという間に冷え込んで、小屋のストーブが着けられる
今夜の同宿となるソロ男性は、南アルプスは両俣小屋でボランティアの小屋番として
毎週のように小屋に駆け付けているとのこと
両俣小屋といえば、あの「41人の嵐」の星さん今もご健在ですか?
と尋ねると、星さんが少しでも長く小屋を続けられるようにと
何人かのボランテイアが集まっている様子を語ってくれた
色んなご苦労もあるようだけど、やり甲斐やちょっとした使命感
そんな想いが伝わって来た

そう言えばこの池ノ平小屋も、今では無給のボランティアの皆さんによる
運営で成り立っているそうだ、今日も明るい女性二人が笑顔で迎えてくれて
とても快適な小屋として成り立っている
同郷の先輩、両俣小屋の方、この池ノ平小屋の運営スタッフ
山にも山小屋にも
人それぞれの想いがあって、その想いに突き動かされて生きている人たちがいる
なんと素敵なことだろうか
今夜の食事も白米が美味しくて、しっかりお代わりすると
明日の下山のロングルートに備え、ぐっすりと寝て4時に出発
まだ暗い中を小屋から出ると、そこには昨日お世話になった小屋のスタッフさん
女性ふたり組が何やらごそごそしている、こんな時間から?
不思議に思いながらも挨拶をして歩き始めて5、6分だったろうか
トラバースの途中で何気なく小屋を振り返ると、暗闇の中ライトが二つ
あ!先ほどのお二人がライトを振りながら見送ってくれているんだ!
その様子が嬉しくて嬉しくて、こちらもヘッ電を持って大きく手を振り返した
今日のルートはこの山旅の中で最も厳しいものになるので
自然と気が急いて、仙人峠の下りですでに汗をかいていた
今日のルート
いったん真砂沢ヒュッテ近くまで戻り、対岸に渡りハシゴ谷乗越へ登り詰め
内蔵助谷へと下りきりると、黒部川沿いのアップダウンを繰り返しながらダムへと戻るルート
標高差、距離だけでなく、扇沢からのバスの最終時間という制限がある
仮に最終便に間に合わなかった場合、ロッジくろよんの営業もしていないので
野宿となることを覚悟してください、真砂沢の小屋主さんに、そう念を押されていた
剱沢、真砂沢からの流れを対岸に渡りきると、はじめて腰を降ろして休憩
もちろん、こんなルート、誰一人歩いていない
黒部ダムまで歩く人なんて居ないのだ
でも、自分は15年前黒部ダムからこのルートで真砂沢まで歩いて来たのだ
その記憶だけが唯一の拠り所だ
やはり想い出深いルート
ただ黙々と登っていると、いろんな情景が浮かび上がって来て
気が付くと、この地の名称「ハシゴ谷乗越」の由来となってるハシゴだ
やはり、ここからの剱岳の眺めは素晴らしい
この角度で拝めるのは、ここだけだ
バスの最終までにダムまで戻るには、10時までにハシゴ谷乗越まで登りきろう
そう目標を立てていたが、まだ8時半?
我ながら良く頑張ったもんだ、もう急ぎ足になる必要は無いだろう
やっと登り詰めたハシゴ谷乗越からは
黒部別山を左手に眺めながら、ずんずんと下って行く
この辺りの、いかにも人が歩いていない感じも変わっていない
内蔵助平まで来ると、空腹に気付き小屋で作って貰った弁当を出す
あんな奥地に会っても、ご飯は美味しいし、こんな可愛い弁当まで作ってくれて
いつまでもライトを振って送り出してくれた彼女たちに感謝しながら頂く
お腹いっぱいになったところで、自分が今いる地は真砂谷との出合
熊の巣状態と言われていることを想い出し、慌てて歩き始めた
内蔵助平からは、ゴーロ帯を下り
樹林のアップダウンを繰り返し、ようやく黒部川へ


やっと終わった安堵と、もう終わったのかと複雑な思い
15年ぶりとなる真砂沢、池ノ平、そしてハシゴ谷乗越
遠い遠い遥かなるこの地へと、再び辿り着いた三日間の短き山旅
その相棒となったのは15年前の自分だった気がする
登山を始めて3年目にして、よくぞこんなルートを一人歩いたものだ
と、半ば呆れながらも少しだけ褒めてやろう
今もこうしてこの黒部エリアに惹かれて歩き続けていられるのは
そんな15年前の自分がいたからだと、旅の相棒に感謝した

登り:2,172m 下り3,126m 距離25Km



















コメント
コメント一覧 (4件)
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地図を広げながら拝見しました、いつもながらすごいところ歩きますね、スロさん。
まだ山歩き初期の頃、仙人池から見上げる剱岳という写真を見て行ってみたいな、と思ったものの、
調べたら自分にはとても行けそうもない場所だと思いましたが、
そういえばここ何年かその写真を見なくなったな、と思ったら温泉小屋など休業状態なんですね。
歩く人も少なったという事でしょうか。
ボランティアで運営されているなんて驚きです。
山歩きには人それぞれの楽しみ方があるのはもちろんですが、
自分の思いとは全く違う世界がいくつもいくつもあるんだな、
とまた改めて感じる記事でした。
あ。
写真のポーズは無意識ですか?こだわりですか?
15年前の相棒と今も同じポーズですね♪
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cyu2さん
確かに、凄いところだと思います、北アの中でもかなりの秘境でしょうね
仙人温泉小屋は、一か所渡渉するところがあるのですが、そこが崩壊して
通行できなくなってから、雲切り新道は人が歩かなくなったと記憶して
います、本当に素晴らしい温泉だったので残念です。cyu2さんの言う
とおり、こうして山で出会う人と直接会話するたびに驚かされたり
ちょっと感動したり、それも山旅のひとつですよね。
ポーズって!?、考えたことも無かったのですが
確かに同じカッコかも(苦笑)って、そこかぁーい^^ 0
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スロさんの山行もそのレポもいつも素晴らし過ぎて
なかなかコメントできない方がたくさんおられるみたいなのに
のこのこ出て来てコメントするのが気が引けるのですが…
今回の「奥劔へ」シリーズもとても素晴らしかった。
自分が行けないところへこうして連れて行っていただけて
本当に嬉しいです。
何度も読み返してしまいました、ありがとう!
で、星美知子さん、懐かしい!
ずいぶん昔に両俣小屋に泊まった時のこと。
その日は私たち(女ふたり)だけが自炊だったのだけれど
そこへ「ここ(河原)にいる人のこと忘れてた(^^;」と
缶ビールを差し入れに来てくださってしばしおしゃべり。
『41人の嵐』の当日のことをご本人の口から聞くという
貴重な経験をしたのをスロさんにもお知らせしたくなりました。
私よりちょっとお若いだけだからもういいお歳なはずなので(^^ゞ
ボランティアの方々が入られているという情報も嬉しかったです。
色々ありがとう、長くなってごめんなさい。 1
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palletさん
のこのこ出て来てって!失礼ですが
のこのこに大笑いしてしまいました(^^
行けないところへ連れて行ってくれる、なんて言われると
たいへん照れくさいのですが、そもそもこんな極めて
私的な日記にコメント残す気になる人は少ないのですよ
なので、遠慮く無くのこのこ来てくださいませ^^
で、なんと両俣小屋で星さんとお話しされたことがあるんですね!
それも「41人の嵐」当日の事ですか?それは何とも羨ましい
というか、非常に貴重な体験されたのですねー
あの危機に直面して乗り超えられた方が今も小屋を運営されてるって
素晴らしいなぁと思った池ノ平の夜でした。palletさんの
素敵なエピソードとコメントありがとうございます^^ 1