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夏の果て 白馬岳(後)

船越ノ頭からは、先ほどの外国人グループと付かず離れず歩くことに
ときおり聞こえる日本語ワードは、ヤリガタケ、カミコーチ、キタホダカ
北アルプスに詳しいことが、なんだか自分の事のように嬉しい


そして坂の上の雲

さすがに外国人グループには分からないだろうけど

この稜線の美しさはきっと伝わるだろう

  



小蓮華山 2789m
新潟県の最高地点、この先は長野県になる
ここで完全にダウン、暑さには勝てない、でも日影も無い
傘を広げて頭の上だけ日影を作って腰を降ろす、それだけでほっとする
その姿を指さし外国人グループの女性が、Good Job!と
慌ててザックから折畳傘を出して広げる姿に笑ってしまう




富山、長野、新潟の県境となる三国境を過ぎると、そろそろ登りも終盤
暑さに負けて、俯いてばかりいたけれど、ふと振り返る
日本海の水平線の上に雲が流れ、浮かぶ稜線は妙高、火打あたりだろう
なんと美しい風景だろうか、もうここでいいや、もう座ろう
こんな暑い山、もうこれ以上歩けない、なんでこんなに美しいんだ
暑さと苦しさと風景の素晴らしさに、なんだか感情がボロボロで
それでも最後の登りを詰めて行くと、急に空気が変わり風が冷たくなる
と、そこは山頂だった



山頂に辿り着いたことよりも
もう暑さを気にしなくて良いことの方が嬉しくて外国人グループとハイタッチ
暑さと苦しさから解放された笑顔で溢れる山頂では、早くも風の冷たさに震える頃
どこからか嗚咽のような声が聞こえて来た
その方向を見ると若い男子が座り込んで、おいおいと声をあげながら泣いている
その彼を苦笑いで囲む仲間たちも、なんだか一緒に泣いているようにも見えた
暑かったよな、苦しかっただろう、よく頑張ったよ
そんな声をかけてあげたくなるほど、人目もはばからず大粒の涙をこぼしながら
声を出して泣く彼の姿は新鮮で、なぜか心に残るものとなった




初めてとなる白馬山荘

食事は何のご縁だか、案内されたのは例の外国人グループの集まるテーブルで
当然のように会話に引きずり込まれるが、一人の女性は都内在住とのことで
少し日本語を話せたおかげで、どうにか会話にも加わることが出来た
このグループは会話の中に、ノヘジー、クマノー、コーヤサン、シュクボー
そんなワードがどんどんあふれ出て、ユーは行ったか?
と尋ねられる度に、照れ笑いでごまかすしかない自分が情けなく
どこがオススメか?と問われ、黒部源流エリアにはぜひ行って欲しい答えると
急にハイテンションかつ早口の英語でまくしたてながら、Sorry と日本語へ切り替わる
どうやら彼女の憧れの地のようで、必ず行くと決めていると熱く語られる
こんなとき、英語でその山の素晴らしさを語ることが出来たら良いのにな
と、今さらながら自分のコミュニケーション力の無さを痛感する




食事を終えて外へ出ると、マジックアワーも終わる頃
登っていた時の暑さはどこへ消えたのか、震えるほどの寒さ
もう20分も早ければ、もっと美しかったかもしれないが
少し近付いたような気がする剱岳の姿に見とれてしまう




そんな夕景に集う者たちのなかに、あの座り込んで大声で泣いていた彼がいた
きっとこの風景も感動ひとしおだろう
自分は山で泣いた、泣けたことってあっただろうか
山頂で泣けるってある意味羨ましいな
ふとそんなことを考えた




翌朝は4時半に山荘を出ることにした
どうやら天気が崩れそうなので、少しでも早く下山したかった
10分遅れで、霧雨の中ヘッ電の灯りを頼りに進むが、ほぼ何も見えない




山頂を過ぎ

明るければ美しき稜線のはずだが、真っ暗な中を進み
岩稜地帯を下る頃、やっと空が明るくなるが、霧雨は続く




こんな薄暗い曇り空でも、ときおり光芒が射すと

そこだけが自然のスポットライトで照らされて、美しく浮かんで見える
そんな一瞬の美しさに脚を止めながらの下山




大池山荘辺りで、ふたたび暗雲に遮られ

最後にチングルマの果穂と大池をカメラで撮ろうとの企みは消え去ったけど




白馬乗鞍では、雷鳥のファミリーたちが待っていてくれて
最後に素敵なシーンを撮らせてくれた
やはり暑さに苦しむ山行となったけれど
18年ぶりの白馬、その天空の稜線は変わらず美しく良き山旅となった

2025年 夏の果てに

コメント

コメント一覧 (4件)

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    今回も素晴らしい写真の数々、うっとり眺めてしまいました。
    どうしたらこんな素敵な写真が撮れるのでしょう?(と言われても・・・ですね笑)
    同じ道を歩いたことがあるはずなのに、特に”坂の上の雲”の写真はどこから撮ったの?
    と思うほどでした。

    あの息苦しかった酷暑の夏もいつの間にか終わり、
    懐かしいような気持ちになりますね。
    どちらにしても白馬はやっぱり何度訪れてもまた行きたくなる名峰だなぁ~
    とスロさんの写真拝見してしみじみ感じました。

    2

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    cyu2さん
    ありがとうございます
    たしかに、坂の上の雲は我ながら上手く撮れたと思います
    でもお気に入りは前編のトップ画像です、水平線が良いかなと^^
    ほんと、息苦しい酷暑が終わると、もう冬の気配で
    秋が短すぎて嫌になりますよね、でも脚の動きはよくなりました
    きっと暑がりのcyu2さんもこれから登りまくれることかと
    ところで、白馬、初めてお会いした場所でしたね(^^;)
    あれって2014年のことなんですよ、そう驚いたことに11年も経ってます
    そりゃお互い歳とりますよね~、来年はぜひ白馬へ^^ 1

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    ボクもまだ‥〝山で泣いた〟ことがありません‥。

    隨分と前に五竜山荘のテント場で、夕日だったか朝日だったか覚えていないけれど、沈むか登る太陽を見ていたお隣の男子が、鼻をすすって泣いていた姿を思い出したわ。
    刻一刻と変わる山の景色を見て、感動して泣けるってのは、いったいどんな感情なのだろうね‥。

    とりあえず、スロさんのこのブログ記事を読んで、実はまだ未踏の〝白馬岳〟は、来年、行ってみたくなりました👌 1

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    bebeさん

    そうそう、実はこの後想い出したことがあって
    ワタシ、一度だけ山で泣いたことあるのです、とは言っても
    登頂に感激したとか、夕景に感動したとかではなく、何故か
    あることを想い出して感極まって、気付いたら涙がこぼれてたのです
    なので、ちょっと白馬で目にした光景とは違うのですが。
    あ、もう歳なので、くしゃみで涙出るとか
    咳き込んで涙流すとかは良くありますよ(何のこっちゃ)
    で?白馬も未踏ですかい?相変わらず美味しいところ残してるねー
    ぜひ来年の夏に、雪渓ルートで! 0

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