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最後の北アルプス 北ノ俣岳



■山:北ノ俣岳
■山行日:2022年10月30日
■目的:2020年最後の北アルプス行
■登山口(05:30)-北ノ俣岳(11:00)-(15:45)

今シーズン最後の北アルプス
行き先は決まっていた、飛越トンネルからの北ノ俣岳だ
このルートは年に一回は歩くと決めている、それは残雪の頃か小屋締め直後
どちらも人が少なくて(元々人の少ないルートだけど)しんっと静まった時期
稜線から眺める今日の黒部はどうだろうか、それだけを想いながら
一人で黙々とこのロングルートを歩く、その時間を大事にしたいと想っている

深夜の飛越トンネルまでのドライブは疲れる、何度来たって疲れるものは疲れる
東名、圏央道、中央道を乗り継いでやっと松本、そして上高地を過ぎても
まだまだ続く漆黒の闇の中、カーブの連続する林道を走る度に
なんで俺はこんな暗闇の中、一睡もせずドライブしてるんだ?
と自分を呪う言葉を吐きながら、それでもやって来るのだ
何故に?そんな苦労して?
それは黒部だ、そこを望むためだ
そのためだったら暗闇の中の連続カーブだろうが何時間だって走るさ
そうやって辿り着いたトンネルから凍てついたトレイルを60分も歩くと
ほらこんなにも美しい景色が待っている
ザクザクと霜を踏む音だけ、あとは何の気配もないトレイル
足元の笹も凍てつき空は底が抜けたように澄み、吹く風は初冬の冷たさ
この季節でしか味わえない山の空気を吸い込むと
きりりと胸が痛むほど

笠ヶ岳が望めるポイントも足元はすべてが凍ってザクザクだ
その踏みしめる感覚を楽しみながら吸い寄せられるように笠に近付いて行く
ふと足音に気が付くといつの間にか男性が横に立って同じように笠を睨んでる
と、一言こぼす「先週の笠ヶ岳は吹雪いてて、途中で撤退したんですよねー」
あぁ確かにそんな天気だったはずだ
しばし二人で笠を睨むと
「この時間だと五郎までは届かないかなー」
そんな独り言を残してずんずん先を行く同年輩と思われる男性を見送る
五郎まで?
このルート、何度かそんな人と出会ったけれど自分には絶対ムリだ
いいさ、オレはオレ、自分のペースで稜線に乗ることが出来たら
その男性が去ったあとは誰に逢うことも無く、静けさの中ひとり
黙々と森の中を歩き寺地山で一息入れる
想ったよりも雪を被っていない薬師の姿が少し残念
それでも澄んだ空気は剱岳をくっきりと浮かび上がらせてくれ
あの稜線の向こうの風景に想いは募る
気になる避難小屋は帰りに覗くこととして
餓鬼田からの木道を進む
後にも先にも
誰一人として歩くものはいない
点在する小さな池塘たち
秋の終わりの空が映り込み、きらきら、きらきら
ここに一日座っていてもいいかと思わせる風景
ふり返ると足元に空が広がり
前を向くと薬師がどんどん近付いて来る
こんな素敵なトレイル、いつまでだって歩けるさ
なんて思ってはいるけれど、実際はいつもこの辺りでバテバテだ
稜線が見え始めてからが最後の急登、これが厳しい
滴る汗に一瞬で冷え込み
身体の芯は熱いのに、表面は凍える寒さ
吸い込む空気さえ肺を凍えさせてしまう冷たさの中
一歩一歩、稜線へ
5時間と30分で稜線に立つ
薬師の雪は風で飛ばされていた
黒部五郎、槍の方向は雪雲が流れ
その雲がどんどん流れて来る
そしていちばん見たかった水晶を中心とした稜線と雲ノ平は
ガスをまとって、なんだか残念
でも、これも冬を前にした北アルプス黒部の姿だ
と自分を納得させていた
その時、あっと言う間にガスが流れはじめた
あぁ黒部だ、初冬の黒部の姿だ

赤牛から水晶への稜線

薬師岳と雲ノ平
今年は会えなかった風景に、こうしてギリギリ会うことが出来た
いや、もう何度目にしたか分からないほどのこの風景
それでも会いたい気持ちに変わりはないさ
そんな愛すべき風景に別れを告げる
また来年来るよ、必ず来るよ
稜線から離れる頃には、また五郎の方から雪雲流れて来る
そのシーンに見とれてる間に稜線はガスに覆われてしまった
なのに、飛越新道分岐から下るとそこは青空
まるで晩秋と初冬の境目を歩いていたようだ
下山ではどうしても気になっていた場所
あの避難小屋がどうなっているのか?立ち寄ってみた
ネット上のとある記事では老朽化で使用できなくなっていたが
今年は補強がされて、今では使用できる状態にあるとのことだった
確かに足元の支柱は補強されているようだ
しかし、この状態でいつまで持ちこたえることが出来るのだろうか
久々にその中に入ると、埃っぽい空気が懐かしく愛おしく
どうかいつまでも残っていて欲しい
この登山道とこの小屋と
それを確かめるためにも、また来シーズンも必ず来るよ

コメント

コメント一覧 (2件)

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    今年もやはり訪れたんですね、きっと北ノ俣岳もスロさんが来てくれるの、待っていたことでしょう。
    いつもながらじんとくる写真、
    自分では見れない景色を、今年も見せてくれてありがとう。

    >吸い込む空気さえ肺を凍えさせてしまう冷たさの中

    あ~よく解ります、本当にその表現がぴったりですね。
    でもそれもまた、冬枯れの山を歩く醍醐味だったりして。
    小屋が残っていたのを確認出来て良かった。
    1

  • SECRET: 0
    PASS:
    cyu2さん

    はいはい、今年も飽きもせず黒部詣でしてまいりました
    アプローチのたいへんさと、ロングルートに疲れきったのですが
    ここは、歩ける間は毎年歩きます
    >北ノ俣岳もスロさんが来てくれるの、待っていたことでしょう。
    くぅぅ~、なんと泣かせる一言!ありがとうございます^^ 0

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