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小屋閉めの雲ノ平 秋思



久々に誰かと飲む酒は美味く
いや、そりゃ美味いに決まってるよ、小屋閉めの雲ノ平山荘
尽きない山の話とワインが二本だ、今これ以上美味い酒は無いさ

日々の厳しい現実やら、いろんな喪失感から
ほんのひと時でも逃れる時間を誰かと過ごせることが嬉しくて
たぶん、今夜の酒は忘れられないだろう

そろそろ引き上げましょうか、と酔っ払った4人が出てっても
ダイニングには山荘スタッフの皆さんの楽しそうな宴が続く
こんな普段なら在りえない緩いムードも小屋閉めならではだ

夜が明けると曇天
これは予報通り、昼前から雨になるはずだ
昨晩の盛り上がりは、軽い二日酔が余韻となって残っていて
他の3名も同じような表情で、朝食を黙々と食べている
いつもの山小屋、いつもの朝の情景
身支度を済ませると、伊藤圭さんにお礼を述べた
まだまだ厳しいでしょうけど、頑張ってください
一夜限りの山友たちに手を振って、いちばんに山荘を後にした
みんなまたシリアスな現実が待つ下界へと戻って行くのだ
この一期一会は、お互いの救いになった気がして
そんな意味でも後ろ髪を引かれながら晩秋の雲ノ平を行く


ブルーグレーに染まった空の下

今日もひとりきり
空の下
風の中

ふっと見た黒部五郎
カールの向こうだけ空が輝いている
あの方向だと笠ヶ岳が望めるはず、こんな風に見えるんだ
昨日の太郎兵衛平と同じように、この瞬間にしか見えない風景に立ち止まる
太郎山から北ノ俣岳への稜線の上
空はブルーグレーから、赤く染まったブルーへと変わって行く
ほら
奥黒部はこんなにも寂しい


最後に雲ノ平から振り返る
水晶も赤牛も雲の中
ただ前方の薬師だけが輝いている
さぁ、もう帰ろう、もう戻ろう

岩と苔の森をずんずん下りきって黒部川
その流れは心なしか昨日よりも澄んで見えた
河原に座り込んで一休み
流れを手にすると、あまりの冷たさにすぐ手を引っ込めた
もう黒部は冬に入ろうとしている
雲ノ平行の帰りはいつも、第一渡渉点からの登り返しが辛い
その勾配の辛さはもちろん、離れて行く楽園を
ふり返りふり返り歩くのが辛い
ようやく太郎兵衛平へ戻ると、その足で太郎山へ
今回の山旅で唯一のピークから薬師岳を拝むと
今年の黒部行も終わった
最後に立ち寄った太郎小屋はしんっと静まっていた
この山域では最後となる、あと7日間の営業を残してこの小屋も閉まるのだ
少し懐かしさすら覚える埃っぽい空気を一息吸って誰もいない小屋を出た
黒部の寂しさ
小屋閉めの寂しさに包まれたまま
折立まで誰一人会うことも無く山旅は終わり
下山後もしばらくは、山の画像を眺めてはその寂しさに浸った
今回の「小屋閉めの雲ノ平」ショートムービー

コメント

コメント一覧 (2件)

  • SECRET: 0
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    >今日もひとりきり
     空の下
     風の中

    なんて美しい光景ばかりなんでしょう。
    すてきなスロ節の余韻に浸っています。
    ありがとう。 1

  • SECRET: 0
    PASS:
    palletさん

    >すてきなスロ節の余韻に浸っています。

    スロ節って^^;
    こちらこそ嬉しいコメントありがとうございます 0

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