
深夜3時少し前、何だかイヤな風を受けながら山の家から出発
もちろんまだ真っ暗でヘッ電着けてのスロースタート
生ぬるい風はたっぷりと湿気を含んでいて、汗だか何だか分からない水分が
前身にまとわりついて不快この上ない
約50分で平標山頂、一息つく間もなく次へと進むが
だだっ広い稜線に吹く風はどんどん勢いを増して行き
誰も一言も出せず(出したとしても聞こえないが)ただ俯いて進むだけ
さらに強くなる風に、歩く姿は自然と前傾姿勢となり、周囲はガスで真っ白
スマホで位置を確認しなければどこを歩いてるのかも不明
そして仙ノ倉ピークが目の前に見えた頃、あぁこりゃダメだな、そう判断した
もう立っているのが精いっぱいな暴風状態なのだ、こんな風の中
あのアップダウンの厳しい稜線を谷川岳まで歩ける筈は無い
「やめよう!撤収しよう!」
大声でそう叫ぶと皆さん声も無くうんうん頷く
平標まで戻るころには空が明るくなってくる
でも空は急変しても風って急には止まないもので
苗場方向から猛スピードでぐいぐいと流れて行く雲を無言で眺めていた
悔しくない、と言えばウソにな
でも、その流れる雲を仰いでいるうちに何だか爽快な気分になり
また来りゃいいや、と思えるようになった
だって自然相手だものこんな日もあるさ
真っ暗闇の中を登った階段を、ガスが流れる中とぼとぼ下りきると
冷え切った身体を暖めるために、山の家に戻った
「あれぇ?もう帰って来たの?」 と小屋主青年は笑う
熱いコーヒーを頂きながら、仙ノ倉での暴風の怖さを語ると
小屋主青年は、谷川エリアの暴風がどれだけ厳しいか
自身の体験談を身振り手振り交えて聞かせてくれる
やはりこの山域の風はヤバいようで
今日の撤退の判断は間違っていなかった
山の家で相談した結果、今日は大源太山へ行こう!と決まる
この山域で大源太と言えば「上越のマッターホルン」と称される
あのピラミダルな鋭鋒が頭に浮かぶが、実はもうひとつの大源太がある
もうひとつの大源太山は、平標から真南に位置する1760mの山
山の家から南へと延びるトレイルに沿って軽くアップダウンして進む
ふり返ると平標高山から仙ノ倉、今ではもう風もなく夏の青空が輝くだけ
そしてエビス大黒の後ろに万太郎山
あぁ、あんなにも大きく下りきって
そしてあれを登り返すのか?なんて厳しい稜線だ
果たして今日のこの暑さでは、どんな縦走になっていただろう
いや、どんなに苦しくともこんな青空の下歩けたら最高だろうな
そんな複雑な想いで稜線を睨みながら歩いた
もうひとつの大源太山ピークに立ち
皆で谷川岳までの稜線を目で追いながら
あそこが厳しそうだの、あそこにも避難小屋があるはずだの
話が弾むが、きっと皆さん胸の内は同じ
主脈縦走への思いはさらに強まったはずだ
山の家に戻ると、さっそく限定メニューのカレーをオーダー
やはり美しく、そして美味しいカレーだった
食事をしてるとボッカから戻って来た小屋主青年
「あれ?まだ居たんすか?」と再び笑われる
確かに、昨日からずっと居座ってるような気もする
それだけ居心地が良いんだよ三代目さん
下山路は灼熱の様相、森の木陰のトレイルではあっても
そよとの風も吹かず汗びっしょりで
話題はやはり主脈縦走のリベンジ
ルートはもちろん今回と同じ平標山の家に泊って谷川岳を目指すことで全員一致
さぁ秋には走破するぞ

















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