
湿地帯が多い山域だから仕方ないが、早朝から森の中は蒸していて
まだ気温は高くないはずなのに、汗が滴り始める
40分も登ると、一つ目の湿原である広沢田代だ
あぁもう分かったよ、もう充分だよ
いっぱい咲いてくれてありがとう
と、頬が緩んでしまうほど可愛く風に揺れるワタスゲたち
こんなに咲きじゃくってるのを見るのも久しぶりだ
ヤバ~い、なにこれ。ここマジでヤバくねー?ほんとヤバいよここマジー
木道の上で完全にハイになってる若きカップル
君たちの言葉はいったい何言なんだ?ん?
こんな言葉しか発せない者が増えてる日本の将来が不安でならないが
今日だけは許してあげよう、この美しさに言葉も出ないってことにして
いやほんと、この美しさマジヤバいって
朝露に濡れる木道から再び樹林帯を縫うように詰めて行く
ときおり爽やかな風は吹くけれど、陽射しはもう完全に夏のもの
ふり返ると足元に歩いて来た広沢田代、その向こうに会津駒ヶ岳
今年は残雪が多過ぎて、駒の小屋前の花畑も未だ埋まっている
樹林の合間からまだ白い雪を残す平ヶ岳
近くに見える白根を望み、ひと登りすると視界が広がり
すっくと伸びる木道の脇には、またワタスゲが咲きじゃくる
伸びる木道の果てに双耳峰のひとつである俎嵓が見えると
ここが、ふたつめの湿原である熊沢田代だ
西方には平ヶ岳、越後駒ヶ岳、中ノ岳、荒沢岳が並び
東方には至仏、笠ヶ岳の頭も目視できる、その横には上州武尊だ
風も、空も、湿原も
すべてが眩いほど輝いていて眼がくらみそう
熊沢田代からの登りはゆるやか
ふり返ると田代がまるで箱庭のようだ
前を行くご夫妻は、日傘を手に座り込み
「もう今日はここまでで充分です」と笑う
うんうん、そんなハイクもありですよ
トラバースが始まると陽射しが強くなり汗が止まらない
もう陽を遮る樹林を抜けたのだ
枯れ沢を過ぎると雪渓があり、少しだけ空気が冷たくて
思わず雪を手に取り、首からシャツの中へ入れてクールダウン
雪渓を超えるといよいよピーク
ほら、平ヶ岳と視線が同じ位置に近づいて来る
ちょうど3時間で俎嵓(まないたぐら)
あぁ今日も見下ろす尾瀬沼が美しい
やはり初夏の尾瀬は特別に輝いている
やっと来た夏の喜びに光り輝いている
平ヶ岳、中ノ岳、越後駒ヶ岳
ピークに居合わせた登山者たちと、山座同定をしあっては
この梅雨明けの空を称え会う
しばし空の蒼さを楽しむと
さぁもうひとつのピーク、柴安嵓へ行くとするか
柴安嵓へは、一度鞍部へと下りきる
そして岩と雪渓を登り詰めることになる
はっきり言って、目的地である尾瀬沼へ下るには「寄り道」だ
何故なら尾瀬沼へは一つ目のピークである俎嵓から真っすぐ降るルートだから
と言ってさ、ここで双耳峰のひとつ踏まずに帰れるものか
そもそも柴安嵓が本峰なんだ
と、山屋ならではの(どうでも良い)モチベーションが働くのである
鞍部への下り、そこからの登り返しはいつも渋滞ぎみとなる
狭い岩の間を縫うからで、しかも今日は残雪もある
時間的に見晴から登って来た登山者たちとのスライドもあって大渋滞
ようやく踏んだピークから尾瀬を見下ろす
こうして上から見下ろす風景では尾瀬ヶ原よりも尾瀬沼の方が美しいと思える
バックの日光連山を今まさに夏雲が覆い隠そうとしている
あぁ夏山だ
身体がしっかりとクールダウンするまで柴安嵓で展望を楽しむと
さぁ戻ろう、気合を入れて下っては登り返しだ
俎嵓の裾まで戻ると長英新道へと進む、このルートで尾瀬沼までは初めてだ
2016年の9月はナデッ窪を降り、その足元の悪さと直射日光に疲れ切って
もう二度とこんなルート歩くもんか!と誓ったことを想い出す
しかしこの長英新道
樹林もあって陽射しは避けられるけれど、はっきり言って長い
ナデッ窪の暑さに比べたらなんてことは無いのだけれど
もう下りきったんじゃない?と何度も勘違いするほど長い
でも長かったぶん、沼へ降り切ったときは爽快だ
途中で休憩を入れたものの、90分以上かかって下りきったところ
突然現れる湿原、見上げるとさっきまで立っていた燧
うん、いい姿だ
大きなブナに囲まれた湖畔の木道を回り込む
ビジターセンター、長英小屋の周辺は人が多いのでスルー
いつものお気に入りのベンチに座り込む
湖面に映る夏の雲を眺めながら、おにぎりだけのランチ
あぁ夏だ、尾瀬の夏だ
もう何度目かの独り言をこぼす
長英小屋の裏から燧を眺めながら想う
このまま、どこかの小屋に泊まって、ひとっ風呂浴びて
生ビール飲みながら、陽が落ちるまで尾瀬沼の風に吹かれていたい
ほんの3年前までは、そんな気楽なことも出来たけど
予約もせず、ふらりと小屋へ泊まれるような時代では無い
分かっちゃいるけど、なんだかなー
後ろ髪惹かれる想いで沼を後にすると
初夏に光り輝く大江湿原をとぼとぼ歩く
東北の短い夏のはじまり
その日に居合わせた喜びと寂しさに浸りながら









































コメント
コメント一覧 (2件)
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いつも楽しく拝読しております。
「咲きじゃくるワタスゲ」、なんて素敵な表現なんでしょうか!
そりゃ〜若者言葉に一家言でちゃいますよねぇ
、、、と思いつつ、昔は自分も似たようなものだったかもしれません。。
暑すぎる夏は高山しか歩きたくないなと思う気持ちとはうらはらに、、、
フワフワのワタスゲと輝く緑の湿原に汗をかきかき、久しぶりの夏空の尾瀬を歩いて、
「なにこの景色!マジヤバイぃ〜!!」と叫びたいと思った次第です(-_^:) 1
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フルシンさん
もうね、咲きじゃくるとしか言いようのない咲きじゃくり方でしたよ^^
涼しいところだと会津駒と言うより中門岳辺り?どうでしょうか
あの周辺は涼しくて、まだワタスゲ咲きじゃくってて「マジヤバ~い」
連発出来そうな気がします。若者言葉はウザいのですが思い起こせば
私も若い頃は「チョベリグー」とか言ってましたからねー
(って、ウソです、そんな時代じゃない^^;) 0