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神々の遊ぶ庭 トムラウシ(後)




■山行日:2021年08月16日ー17日
■山:トムラウシ
■目的:大雪山系
■ルート:登山口(04:50)ー五色岳(10:10)ーヒサゴ沼(12:00)
     ★ヒサゴ沼(04:45)ートムラウシ(09:20)ー化雲岳(12:35)ー登山口(17:30)



雪渓に半分埋もれた木道を抜け、広い稜線へ乗ると
前日は雨とガスで何も見えなかった庭が見渡せた


昨日歩いて来た方向を振り返ると、どこまでも続く木道の果て
丘状の庭に小さな岩山が見えている、あれがきっと化雲岳だろう
そして振り返ると目的地、その姿をやっと捉えることが出来た
王冠、その名にふさわしく威風堂々としたトムラウシ
なるほど、ここは庭だ
神遊びの庭だ


その王冠の大きさに畏怖を覚えるが
まだはるか遠き姿が拝めたところだ

さぁ近付いていこう王冠へ


ゆるやかな丘状のトレイルをゆっくりと超えると谷間になっている
ここがヒサゴ沼からの雪渓ショートカットとの出合いだろう
下って行くと二人の山ガールが休憩中・・・ん?避難小屋に居たペアだぞ??
と、休憩がてら話しかけると、やはり避難小屋からショートカットして来たらしい
あぁ、あのおじさん?ウチらにも何か言ってたけど無視して来ちゃった
ぜーんぜんゆるい雪渓でしたよ!え~?分岐戻ったんですかぁ?たいへ~ん!


何それ?
オヤジめ、60分ものロスタイムどうしてくれようか
山ガールたちと別れ、ぶつぶつ言いながらコルから登り返し、ふと振り返ると
ゆるやかな広い庭に小さな豆粒のようになった化雲岳のシルエットが浮いている
あの美しき庭が朝陽に輝く姿を独り占めで歩いて来れたんだ
ロスタイムくらいどうって事ないさ


ヒサゴ沼方向を振り返ると、バックに大きく尖った山影
下山後に調べるとニペソツ山だった
師匠が大好きな山だ




トレイル周辺に岩礫が目立つようになる
その美しきエリアが日本庭園

荒涼たる岩礫と静かなる池塘
そして辺り一面を覆うチングルマの果穂

なんて広さだ、なんて美しさだ
もう、もう言葉が出ない




その静けさに耳の感覚がおかしくなりそうで
意味も無く木道を蹴ったり咳払いしたり

そんな怖いほどの静寂を破ってくれたのはナッキーこと鳴きウサギ
なんとも可愛らしい姿と声で、岩影から出たり入ったり忙しいこと


日本庭園を過ぎると木道は消え、足元は岩場に変化する
その岩場もどんどん岩が大きくなり、勾配も厳しくなってゆく
このエリア、その名もロックガーデン
この岩場のひと山を超えるのに体力を消耗し、今日はじめて座り込んだ
そのロックガーデンを超えると、いよいよ王冠なのか?と期待しながら進むが
何故かトムラウシの姿は、これまでよりも遠くに見える不思議
なんだ、この広大さは・・・


そしてやっと、ヒサゴ沼から3.5時間でトムラウシの裾野、美しき北沼だ
この北沼分岐でまたも2009年の遭難事故を想い出す

ツアーの皆さんははここに辿り着くまで、雨に打たれ強風に煽られ体力は限界だった
そこへ、この沼が溢れ出し膝までの川となり、身動きできないまま低体温症となって・・・

こんなにも美しき庭で、神はなんとむごいことを




王冠の裾野を回り込むように、岩と岩の合間をペンキ頼りに登り詰める
そんなタイミングで何故かガスが湧き始め、ピークに立った時には展望も消えてしまった


北の大地、そのど真ん中
このピークに立てるなんて思ってもみなかった
今日はもう素晴らしい風景を充分に堪能し、ガスで真っ白な展望にも満足だ


これから崩れる予報、そして60分ロスしたおかげで時間もギリギリだ
さぁ急いで下ろう、とロングルートで疲れが出始めたのだろうか
ロックガーデンの岩場で足先がもつれて転び、ひとり苦笑い
そこで振り返った王冠の姿が最後で、あとはガスに消えてしまった


下山路
延々と続く木道を歩いていて不思議な感覚に陥っていた

憧れのトムラウシに登れた、こんなにも美しき神遊ぶ庭も歩けた
なのに何故だろうか、いつもの胸に迫って来るもの
それが薄い気がする、そんな感覚

自分が山旅にいちばん期待するもの、それは
「独りきりで最果ての地を彷徨うときの寂寥感」
いや、もちろん今回もそれは感じている、ただそれがいつもと違っている




周囲の山並みが、沸き上がるガスに消えて行く中
不思議な感覚の正体が分からず、悶々と歩いていた

そして、ふと気づいた
なんだこの木道?もう4時間?いやそれ以上歩いてるのにずっと続いてるぞ
しかもガスのせいでもあるけれど、景色もあまり変わりがない
この山行で何度目かの独り言がこぼれた

なんだこの広さ

分かったよ、不思議な感覚の正体
きっとこの山があまりにも広く、あまりにも大き過ぎて
自分のものになっていない、捉えきれていないのだ
そうだ、山の広さに呑まれてるんだ・・・
片道20キロ、そのほぼ全てが木道であるロングトレイルを経て
自分の中でのトムラウシ起点である沼ノ原ですっきりとした
そうなんだ、じゃもう一度歩けばいいじゃないか
自分のものになるまで歩けばいいじゃないか
山旅の最後
来年の夏もう一度大雪山系、その主稜線を縦走することを誓った

コメント

コメント一覧 (6件)

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    とにかく大きすぎる、といった感じなのでしょうか。
    北海道の山は行ったことがないのでわかりませんが、
    何時間も歩いても歩いても景色が変わらないって、
    たしかに本州ではできない体験ですよね。
    なるほど、最近のスロさんのハードな山登りは、
    この夏の大雪山系へのトレーニングを兼ねているのかな。
    思いついたとき、行けるときにどんどん行きましょう!
    やりたいことは思った時にやりましょう。
    自分の思った通りになんて、世界は進まないから、
    チャンスは目の前の今、ですよね(^^

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    cyu2さん

    その通りです、とにかく雄大で広大なのです
    なので捉えようがないのです、自分にとってはですが・・・
    トレーニングってワケじゃないのですが、まぁアレですね
    最後の足掻き?みたいな、まだまだオレだって的なカンジでしょうか
    いやほんとね、いつ何時、世の中が世界がどう変化するか
    明日をも知れぬ時代ですから、生きてる内がチャンスですね^^ 0

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    トムラウシですか・・・ ため息が出そうな雄大な眺めですね!
    実は、ず~っと計画だけは練ってたんですが、あまりに懐が深く、かみさん連れでは無理かな?と半ば諦めてたお山です。
    地図を見ながらレポを読んでて、ここがこんな所・こんな景色なんだと、行った気になっちゃいました。
    北海道、すっかり虜になっちゃったみたいですね。今年はどこ狙うのか楽しみです (^^)/ 0

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    GRIさん

    そうなのです、ほんと溜息ばかりな雄大さでした
    >あまりに懐が深く、かみさん連れでは無理かな?
    なにをおっしゃますやら~超健脚ご夫妻でいらっしゃるのに!
    GRIさんご夫妻なら全然大丈夫ですよ、ちょっとロングなだけですから^^
    今年ですか?うーんんん、まだ迷ってるところです
    って、いろいろ考えてるのがまた楽しいですよね^^ 0

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    トムラウシって、こんなところだったのですね。
    広大とはこんなところのことを言うのだなとしみじみそう思いました。
    私もスロさんのこのレポ読みながらずっと頭を離れなかったのは
    あの遭難事故のことでした。
    …いま何気なく「事故」を「事件」と書きかけてしまったのですが、誤解を恐れずに言えば、
    もしかしたらあれは「事故」ではなく「事件」であったかもしれないと
    この広大な光景をみてふとそんなことを思ってしまいました。

    スロさん、素晴らしいお天気の日を捕まえて幸運でしたね。
    私もこんな素敵な景色を見せていただけて実に幸運です(^^。 0

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    palletさん

    8名もの方が亡くなられ、その後の裁判などで明かにされたツアー会社の運営
    のいい加減さ、リスク管理の甘さといった様々な要因をならべて総括すると
    まさしく(事件)でしょう。
    今回山行前にネットに沢山残ってる記事を読み返しましたが、今もいろんな事を
    考えさせられますね・・・。
    初日は天気予報より悪く早々に雨で、久しぶりに山で泣きたくなりましたよ
    北海道まで来てこれかよって(^^;)でも二日目が良い方に変わってくれて
    素晴らしい風景に出会えて、ほんと幸運でした、少しでもお裾分けになれば
    良いのですが^^ 2

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