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神々の遊ぶ庭 トムラウシ(前)



■山行日:2021年08月16日ー17日
■山:トムラウシ
■目的:大雪山系
■ルート:★登山口(04:50)ー五色岳(10:10)ーヒサゴ沼(12:00)
        ヒサゴ沼(04:45)ートムラウシ(09:20)ー化雲岳(12:35)ー登山口(17:30)


2020年の夏
山の師匠に同行する形で初めての北海道登山を経験し、遠征登山のノウハウを得た
その経験をもとに、次はソロで行こうと決めていた翌年、2021年の夏
憧れだったトムラウシを登るため、北の大地へと旅立った



トムラウシの最もメジャーな登り方は「短縮登山ルート」その名の通り最短距離だ
昨今のネット記事を参考にすると、このルートを日帰りでこなすのが主流なようだ
でも今回、憧れのトムラウシに登るにはマイナーかつ往復40キロ超のロングルート
クチャンベツ沼ノ原からの縦走ルートで歩きたかった

その決め手となったのは
ある雑誌のグラビアに掲載されていた、高層湿原の沼ノ原から望むトムラウシが
それはまるで夢のように美しく、また秘境感もあって心惹かれたのだ




空港からレンタカーで層雲峡温泉まで一気に移動し
温泉を浴びると秘境の入口へ、層雲峡本流林道を進む
この林道は大雨で流されて4年間通行止めだったのが、昨年から通行可となったもの
一車線、路肩は脆く、砂利だけで形成されているような林道のドライブで疲労困憊
トヨタのライズなんて小さな車内で腰を折って朝まで眠った




ロングルート、しかも天気予報は午後から崩れる、5時までには歩き出そう
平日だったこともあり、駐車スペースは2台だけだった、その一台の主より
15分ほど遅れて歩き始める

登山口からすぐに深い森、そして渡渉
石狩川源流の一部でもあるクチャンベツ川の流れる音がまだ暗い森に響く




60分も歩くと湿原が現れる
天気が良ければ、もう大きなトムラウシの山塊が見える頃
なのに残念なことにガスで何も見えず、沼に降りることすらパス

湿原の中を真っすぐに伸びる木道を進むと、五色岳へ登る手前は
一度沢沿いに下りきる、その鞍部が五色の水場だ




晴れてさえいれば、はるか先にトムラウシ、後方に石狩連峰が望める五色ヶ原
こんなに濃いガスに包まれては、いったい何のために遠征して来たのか
と、くじけ始めたところへ、追い打ちのように雨が落ち始め
カメラは諦めてレインスーツを着込む

水場から五色岳までは500m近く登り詰める
濃いガスの中、チシマノキンバイソウやチングルマ、エゾコザクラ
可愛い花たちが小雨に濡れて揺れている中を黙々と登り詰める
雨とガスしか見えない五色岳山頂、ここから北方が旭岳だ
山頂から先は胸の高さのハイマツの中
ヒグマの気配を気にしながら、クマ鈴を大きく鳴らしながら進む
さぁいよいよだ、ここからが大雪山の主稜線だ
霧雨のはるか向こう、見えないトムラウシに向かって木道を進む
視線の先に対象物が無いため、歩いている速さだとか距離感が掴めず
いや、今自分は歩いているのか立ち止まっているのかすら分からない
そんな錯覚を覚えるほど、霧の中を木道が延々続く
化雲岳との分岐に気付かないまま、ヒサゴ沼分岐まで来ていた
改めて地図を確認すると、その名が目に入る
このエリアこそが「神遊びの庭」だ
雪渓に埋もれた木道階段を沼まで下りきると、避難小屋はもうすぐそこだ
一番乗りの特権で、自分の好きな場所を取り素っ裸になって着替えると
ザックに入れていた缶ビールで乾杯
静かすぎる小屋の中で想うは、やはりあの2009年の忌まわしき遭難事故のこと
山歩きを始めて二年目だった自分にとっても、あのニュースは衝撃的なものだった
ガイドを含む18名のツアーの内、8名の方が亡くなった気象遭難だ
悲劇の前夜、この小屋この空気の中で雨に濡れた姿で震えながら過ごしていた方たち
それを想うとビールも苦く、独りでは小屋の空気も重く感じた


小屋は徐々に混み始めて、17時頃には2階も含め9割ほど埋まったろうか
独りで重く感じていた空気は賑やかさに消え、いつの間にか眠っていた

4時に起きて準備を整える、外は予報に反して晴れ間が覗いている
湖畔の木道をルートとは逆方向に歩いて景色を眺めていると
突然エゾジカの群れが飛び跳ねた
朝靄の中、大きな声で警戒しながら湿原を飛ぶ姿は、ただただ神々しく




雪渓のショートカットを進んできると後方から大きな声が響く
振り返るとソロ男性が身振り手振りで戻れと言っている

その方によると、雪渓ルートは雪が不安定で危ないからヒサゴ沼分岐まで戻れとの事
直近の情報では皆さんこのルートで進んでいるが、前日歩いて危険だったと言い切る
今日こそ25キロ超のロングルート、少しでも早く歩きたいのだ、分岐まで戻ると60分のロス

しばし迷ったが、そこまで言うなら従うしかないか



歩き始めからロスタイムに少し凹みながら
ヒサゴ沼分岐まで、昨日下った雪渓に埋もれた木道を登り返していると
朝陽がチングルマの果穂を照らし、それはまるで夢のようなシーンとなって行く

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