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狼と霧氷 七ツ石山

■山行日:2022年12月18日
■山:七ツ石山
■目的:狼に逢いに行く
■ルート:村営駐車場(07:20)-七ツ石山(10:00)-奥多摩小屋(12:00-13:00)-駐車場(14:30)
週末の行き先は例によってネットで見た風景からあることを思い出して奥多摩へ
その風景とは雲取山へのルート、石尾根の長い登り坂、その両脇が
霧氷で真っ白になっている美しい風景だった
タイミングも良く、冷え込む予報に期待しながらいざ奥多摩へ

雲取山って常に多くの登山者で賑わう超人気の山だけど
最も一般的なルートである鴨沢からのピストンでもCTは約10時間を要する
そう、けっこうな登山なのだ、なのでこの時期だと6時には出発したい
と、5時半にタイマーセットしてシートを倒したのは4時半ちょうど
なのに起きたのはあーら不思議、7時だってさ
やれやれ
こりゃ急ぎ足でないとピーク踏めないぞ
慌てて歩き出すと、駐車場から既に霧氷が見えている
この辺りはまだ低いはずなのに?今日の冷え込み予報は当たってたんだ
逸る気持ちに足元も急ぎ足、だけど林道から15分でもう谷間の向こうは
霧氷が白く輝いていてカメラを出さずにはいられない
野猿の巣となっている廃屋を過ぎるとパラパラと何か落ちて来る
ん?んん?氷?見上げるともうそこには霧氷が
我を忘れてシャッターを押し続ける美しい風景
今まさに朝陽を浴びてはらはらと舞い落ちる氷の華たち
さくさくさく
しゃりしゃりしゃり
美しき華たちを踏むしめて歩く音
今の季節にしか聴くことの出来ない、この懐かしき音
澄んだ空気の中に自分が踏みしめる音だけが小さく響く
この風景とこの音だけでいいじゃないか
もう雲取のピークも石尾根の霧氷もいいじゃないか
そう思えるほどの美しい時間
誰ひとり後を追う者もいない
誰ひとりすれ違う者もいない
静かな静かなトレイルをときおり風が通り抜けるだけ
そんな静かなトレイルも、いつの間にか足元は雪道となった頃
小さな小さな山小屋に辿り着いた
雲取山から鴨沢までのルートは、2017年と昨年(2022年)の二度歩いただけ
どちらも降り、それもこの小さな山小屋は巻き道でパスしていた
その小さな山小屋の名は七ツ石小屋
初めて見る小屋の姿は新鮮で、なんだか妙に気になって下山後に調べると
たった8名の収容人数、薪ストーブで暖を取り窓から富士山を眺める事が出来るってさ
あぁ想像するだけで堪らない、一晩泊ってみたいな
その山小屋からほんの少し登ると木祠があった、今回の目的でもある七ツ石神社だ
あれは数年前に見たNHKローカルニュースの小さなコーナーだったかと記憶する
この神社の再建と丹波村の村おこし的なニュースで紹介されて知った小さな神社
その特徴は狛犬が狼であること、丹波村には狼信仰が伝承されていること
そんな謂れのナレーションと共に映った、朽ち果てた木祠と狛犬の姿が目に焼き付いた
その姿は全国に点在する狼の狛犬像とは違って、なんとも小さく愛らしい姿なのだ
その狼が罅割れ、一体は頭が崩れかけ、二体とも白い手拭で大事に包まれてる姿は
可愛らしいやら痛々しいやらで、それが村の皆さんの手によって再建されて
無事に新装なった祠に座る狼の姿に心からほっとしたのだ
その狼の姿にいつか会いたいなと想っていた
関東の山を歩き始めて知ることとなった奥秩父を中心に根付く狼信仰
その信仰故にこの雲取山域にも、大菩薩域にも「狼平」と名の付く開けた場所が今も残る
山火事や盗賊の来襲を遠吠えで麓に知らせ、田畑を荒らす鹿や猪を撃退する姿から
火事・盗難・災難除けの神とされた狼たち
山の民は月夜の「狼平」で大きく遠吠えをする神の姿を見たのだろうか
雲ったガラスと光の加減で、会いたかった狼の狛犬像はよく見えなくて
もどかしい思いで木祠を後にすると、雪の上に小さな足跡が
ん?これって来た時には無かったぞ?
さては木祠から狛犬が・・・
神社を後にするとすぐにピークだった
その小さなピークは360度の展望に囲まれて、こじんまりとしながらも
なんだか居心地が良くて、あぁ、なんだかいいなこの山と独り言
そのピークから雲取山を見渡すと、ネットで見た数日前の霧氷の石尾根の姿は無く
ただ冬枯れた樹林が雲取山に向かって続くだけ
なんだ、じゃ遅刻しても良かったかも、と自分に言い訳をしながら
今日はこの七ツ石山までと決めた
だってここまで充分美しい霧氷の中を歩けたし、富士山は雲の中だけど
ここから眺める飛龍山の稜線の美しさにもう大満足だ
とは言いながらもこのまま下るのも惜しく
ピークからブナ坂に向かってずんずん下り、気付いたら奥多摩小屋跡まで
雪の上をふらりふらりと歩いていた
空はどこまでも青く
風は凍えるほど冷たく
なのに陽射しは柔らかい
本格的な冬を迎える前の小春日和に雪の上を歩く
冬って、雪っていいな
ひとりしみじみと歩く
気になっていた七ツ石神社の狼にも会え、素敵な山小屋にも出会い
そして霧氷回廊を歩くことが出来た2022年登り納め
柔らかな冬の陽射しに包まれながらふと思うのは我がホーム
かの地はもう白く降り積もっているだろうか
関東山地と紀伊山地、遠く離れたふたつの狼平に想いを馳せ
師走の街へと下山した