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祈りの道をゆく 大峯奥駈道縦走記 3rd Day 

二日目の無事を祝って缶ビールを空け、さらにウイスキーも飲ってご機嫌でお休み
20時には寝ただろうか、ぐっすりと寝込んでる私を起こしたのはシカの鳴き声と急激な冷え込みだ
なんだ、この寒さは?と、外へ出ようとするとパラパラと氷片が落ちてくる
なんと結露が凍ってるのだ、そして外で確認すると表面ももちろんガリガリになってる
そりゃ寒いはずだ、千丈平も薄っすらと霧氷っぽく白い

この冷え込みのせいか、昨日はなんとも無かった右腰はやはり痛む
そして、起き上がろうとして、それよりも大きくカラダの異変を覚えたのは左膝だ
膝が完全に固まってて、起き上がるどころか屈伸も出来ないのだ
あ、これは暖めないと!
シュラフに潜ったまま湯を沸かしコーヒーをウイスキーで割って飲む
しばらくしてカラダが温まると外へ這い出て軽く歩いて膝をほぐそうとするが
右腰と左膝の痛みでアンバランス、まるでポンコツロボットだ

■千丈平


ぎこちない動きしか出来ず、暖まるどころか強い冷気にカラダはすぐに冷えてゆく
あぁ、こりゃダメだ、今日はゆっくりしよう
昨日作っておいたチキンライスを暖めなおして、熱い味噌汁と頂く
も一度コーヒーを飲むとシュラフに潜り込んで左膝を延々とマッサージ
あぁすでにココロは折れそう


今日は、いよいよ後半の、そして未知なるエリアである南奥駈に入るのだ
そこは恐るべきアップダウンの連続エリア
山仲間で奥駈経験者の皆さんもその厳しさ繰り返し語るほどだ
予定では、CT11.5hで行仙ノ宿までだが、様子を見ながら持経ノ宿までとしよう
歩こう、歩き始めれば、どうにかなるはずだ、ほら、もう右腰は暖まって大丈夫だぞ

■38靡:深仙ノ宿(後方は釈迦ヶ岳)

右腰は痛まなくなったものの、トラバース道を歩き始めると膝が踏ん張れない
Wストックをフルに活用して深仙ノ宿へ向かう頃には額に脂汗が浮いていた
それでも見上げた青空は、今日も旅人を応援してくれてるかのように澄み渡ってて
素晴らしき青空の下、歩いて行こう、一歩でも歩けばそれだけ熊野へ近付くんだ

深仙ノ宿から大日へ登り返す、登りだけは膝の負担も軽いため、まだ楽だ
振り返って釈迦ヶ岳を見上げる
こちらから見ても釈迦ヶ岳の女性的で穏やかなラインは美しい
きっと今もお釈迦さまは青空の下、微笑んでるだろうな

■太古ノ辻

太古の辻、なんと趣のあるネーミングだろうか
そして「これより南大峯奥駈」との記し、さぁ南へ!

道標の前で前鬼からと思われるご家族が休憩されている
お父さんが私のザックを指さし、熊野までですね?と感心される
ちょっといいですか?と私のザックを片手で持つが、こりゃ持てないわー、と苦笑
そんなお父さんを、奥様と娘さんが笑ってる姿が何とも微笑ましく
ふと、今頃鬼ヨメは何をしてるだろう?なんて思い出してしまう

■石楠花岳

太古の辻から登り返しは、先ずは蘇莫岳、展望はなく、いかにも南奥駈の始まり
トレイルは狭く、樹と岩の間を縫ってピークへ辿る、そしてピークには巨大な岩石群

そこには仙人舞台石と記されてある、大峰の神々がここで舞ったとか
そんな謂れを想像しながら、蘇莫岳から一度下り登り返すと石楠花岳

そこからすでにアップダウンが始まっている南奥駈の姿
手前が天狗山だろうか?この姿を見て、無意識のうちに左膝を撫でていた




次なるピーク、天狗山への登り返し、マップのCTは60分
さぁ始まったぞ、もう行くしかないぞ
1,536の天狗山からは昨日歩いてきた奥駈道が望める

今日は未だ2hだが、すでに長距離を歩いてることが分かる
こうして振り返る度に釈迦ヶ岳が見守ってくれてるような気がする

でもそれは、逆に言うと、いつまでもお釈迦さまの手の中にいるってことか
独りの時間が長いと、そんな、どうでもいい事ばかり考えるようになってしまう




赤井谷を右手に見下ろしながら、次なるピークは1,510奥守岳だ

このエリアはずっと樹林がなく展望が広いのでアップダウンもそれほど苦にならない
 

千丈平からほぼ3時間、今日は早めに腰を下ろして行動食を採ってると
天狗山から二人の男性がやって来た、ほぼ同年代か?関東からの遠征だと言う彼ら
今朝は楊子ヶ宿からで、小屋は暖かかったけど、早朝は稜線上にはずっと霧氷だったと言う

5月GWに霧氷?さすが大峰だ、関東からも大峯奥駈道を目指す人の存在が嬉しい
  

■嫁越峠

奥守岳から下りきると、嫁越峠(よめこしとうげ)だ
今では山上ヶ岳のみ、女人結界門によって女性の入山を禁じているが
元々修験道であった大峯奥駈道そのもが女人禁制だった

その道も十津川の女性が北山村へ嫁いでゆくときに限って、幅三尺だけ
花嫁が越えることを許されていたとされる峠道だ、そんな大昔の謂れを想うと
花嫁の父が手にした松明で、物の怪から護られながら馬の背に揺られている

まだ幼き少女の姿が目に浮かぶような気がする

花嫁は、どんな想いで、どんな衣装でこの峠を越え、嫁いで行ったのだろうか



そして、峠を登り返すと、私が来たかった場所、天狗ノ稽古場だ
ここも想像力をかきたてられるネーミングじゃないか
天狗の修行場でもなく、天狗の住みかでもなく、天狗の稽古場だ
古人たちは、この広い尾根で何を見たのだろう

天狗は空を飛ぶ稽古でもしていたのだろうか

コバイケイソウの咲き乱れる中、独りワクワクする
やはり1,300年もの歴史ある修験道だ、不思議な謎に満ちているぞ



涅槃岳からの下りは、私の背を越えるスズタケの群生となる

この南奥駈の笹、スズタケを刈って奥駈道を蘇らせた新宮山彦グループの
皆さんのご苦労を知り、ちょっと感動した



聞きしに勝るアップダウン地獄を痛む左膝をかばいながら進むと、15時ジャスト

青い屋根が見えてやっと持経ノ宿だった、その整備された小屋の中でしばし休憩
既にギブアップ状態な左膝を撫で、ここで泊まるか?思案する
でも、まだ15時だろ?も少し歩こう、あと一歩進もう、それだけ熊野に近づくのだから

それに、次のポイントである平治の宿に行けば、新宮山彦の玉岡代表がいるはずだ
 

よし、平治までは行こう!そして玉岡さんとお会いしよう!



奥駈道は、一度林道を跨いで登り返すと、奈良県で唯一
森の巨人たち百選に選ばれた持経千年桧があった
ミズナラの巨木の間を軽くアップダウンして行くと、持経ノ宿と同じく青い屋根の平治ノ宿
早速小屋に入ると、関東遠征組のペアも到着してて、今日はここまでだと照れながら笑う
そして新宮山彦グループ代表の玉岡さん、Yさんが笑顔で出迎えてくれた

■平治ノ宿

玉岡さんは、あぁ、あの東大阪から行仙に缶ビール持ってきた?と
光栄にも私のことを覚えてらした。今夜は、さる高名な仏門の方が行者修行として
玉置神社からここまで来られるので、お出迎えされるとのこと
焚き火がごちそう、焚き火がごちそう、と繰り返しながら囲炉裏に火がくべられる



食事も終わりシュラフを広げる頃、錫杖の鈴の音と共に行者さんが到着される
シュラフの中で聞こえてきた行者さんの会話では、玉置神社からの道のり

体調が悪く食事どころか水分補給さえできなかったそうで、こう呟いた
「行をする者は、必ずこのような難にぶつかるものです・・・」

私も同じだったのだろうか?行者さんの言葉を寝物語に眠りに就いた


 
- The Third Day 12km 予定CT10.0H 実績CT11.5H -




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