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百年食堂 日本一の中華そば

師走の大阪
柔らかな冬の陽射しに包まれて、懐かしい街を歩いていた
パチンコ、串カツ、立ち飲み屋にグランシャトー
昼から営業の怪しい店の数々が並ぶ
大阪を代表する繁華街のひとつ、京橋


そんな猥雑な京橋の喧騒も、京阪国道を一本北へ過ぎると閑静な空気となり
昔ながらの大阪の街の路地となる

そんな風景に溶け込んだような小さなお店がある

店内は、少し薄暗く中央にはショーケースがあり、惣菜や焼き魚が乗った皿が並ぶ
まさに大衆食堂の王道なる風景に、思わず壁の時計を見上げた

いや、時は止まっていない、現在の大阪だ

あれは神戸に転勤する前のことだから、そんなに大昔ではなく
たぶん2005~2006年くらいだったろうか
当時、京橋と桜ノ宮のオフィスを行き来する内に、小さな路地に迷い込み
つい、ふらっと入ったことがある、それだけのお店
なのに、何故か記憶に残っていたお店

よかった!今も開いてたよ、このお店
あの当時も、高齢のご夫婦だけで営んでらしたから心配だった
数回お昼を頂いたけど、記憶にあるのはチャーハン
あの味が食べたくて10数年ぶりに訪れたのだ

メニューを見上げるがチャーハンは無い
あ、あった
そこには当然のように「やきめし」と記されてあり思わず頬が緩んでしまう

ふふっ
そりゃそうだ、大阪は京橋の下町
チャーハンじゃないよな、やきめしだ

その優しいお味のやきめしを頂いていると、60歳くらいの女性が入って来た
その人は、立ったまま、お店の中を長々と見渡しながら言った

  「中華そばて、、、今もやってます?」

  都島に用事あって、たまたま通ったら、お店見つけましてん
  いやぁ懐かしいわぁ、たぶん40年?いや50年ぶりですわ
  私ね、子供の頃そこにあった長屋にね、あそこにね
  母親と二人で住んでましてん、月に一回くらいやったかなぁ
  銭湯の帰りにね、お母さんがこのお店連れて来てくれて
  いっつも、この中華そば頂いてましてん
  今から思ぉたら、贅沢やったんやろうね、精一杯の
  それが楽しみで楽しみで、ここ通る度に中華そば食べたい言うて困らせて
  もう長屋も銭湯も、私ら通ぉてた小学校も全部無くなってしもて
  せやのに、このお店だけ、ちゃんとやってはってんねぇ
  お母さんにも、も一回食べさせてあげたかったわ
  嬉しいわぁ。美味しいわぁ。なんやしら涙出てきてもうた、あぁ恥ずかし。

独白を続け、泣き笑いで、美味しそうにそばをすする女性
その姿をテーブルの前で笑顔で見守る、お店のお母さん

あぁもうっ
中華そば下さい!

きちんとナプキンで包まれたスプーン、お店の空気、やきめしの味
そして、はじめて頂いたのに懐かしい、中華そば
なにもかも時が止まった空間で頂く暖かな味

昭和30年からご夫婦お二人だけでやって来られたお店
その名は大衆食堂日本一
どうか百年続きますように

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