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新宿思い出横丁のアフロ母ちゃん


関東がこの秋一番冷え込んだ、小雨の土曜の午後だった
休日出勤、それも出張帰り、何故かふらっと途中下車したのは新宿駅
上州へ単身赴任する以前から東京へはちょくちょく出張で来ている
なのに、新宿はほとんど知らない、訪れる必然性も偶然性も無い街だったのだ
そんな見も知らぬ駅、ふらっと降りて歩くのもいいか、なんてノリで・・・

西口から地上へ出てすぐのところ、小雨に濡れる思い出横丁の看板
気づいたら、吸い込まれるように薄暗い路地を彷徨っていた
なんとも言えない場末感、昭和ムードって言うか、ヤミ市なんて言葉が似合ってそう

午後2時、早くも酔っぱらってるオヤジが居座るモツ屋
開店にむけて仕込みに勤しむ焼き鳥屋
開いてんだか、準備中だか分からない、そもそも何屋なのかさえ分からない店

そんな路地を歩いてて底冷えに震えながら、なんとなくラーメンが食べたくなった
と、思ったら目の前の暖簾にラーメンの文字、ここでいいか
L字カウンターの小さな店、その路地側に座ると、ビールと餃子をオーダー

ふぅ
いいもんだ、仕事も終えて昼間っから飲むビア
カウンターの中、一人手際よくサクサク動き周るお母さんを眺めながら
一週間の疲れからか、もうほろ酔いな感じを楽しんでいた

寒い寒い寒い、あー寒いねー

そりゃ寒いでしょ、みたいな薄手の赤いカーディガン姿のお母さん、一つ椅子を挟んで座る
推定70代後半ってところか?ヘアスタイルは金髪そしてショートなアフロヘア
(としか表現できない)ちょっとファンキー、ちゃきちゃっとした母ちゃんだ

そんな寒いの?カウンターの中居ちゃ分かんないや とラーメン屋のお母さん
寒い寒い、ねー?寒いよねーお兄さん?

来た来た、来たよ、自慢じゃないが、オレはどこに居てもオバ様に絡まれる役なのだ

そーですね、天気予報でもこの秋一番の冷え込
あー、ママ?あたしワンタンねー!

いやいや、自分から振ってて、そりゃないよ、最後まで言わせてよ、ったく

そこへ餃子の出来上がり
なんだか餃子まで懐かしい味に思えるのは気のせいか
美味しく頂きながら、お母さんの手際の良い焼きそばの捌きを見ていた

ソース味なんですか? と聞くと横から突っ込まれた

鉄板で焼きそばったらソースだろぅ?おかしなこと言うねぇ、ひっひっひ

オレはお母さんに聞いてるの、アフロ母ちゃんに聞いてるんじゃないの!

380・・・円?ですか?めっちゃくちゃ安いですね?
そりゃ安いに決まってるじゃないか、キャベツしか無いんだもん、ひーっひっひっひ

だ・か・ら、絡んで来ないでってアフロ母ちゃん、って言うか銀歯が怖いし

アフロ母ちゃんがすすってるワンタンが美味しそうだったのでワンタン麺をオーダー
背中にはビニール暖簾だけ、足元から冷気と風がビュービュー這い上がり
麺を茹でる釜の湯気が小さなお店に舞う
路地の向こうから、雑音に紛れてラジオの演歌

なんだかなぁいいなぁ、早くできないかなぁ、いい香りだなぁ

あいよ、ワンタン麺ね
子供のようにワクワクしながら待ってるオレの前に、どんっと鉢が置かれた



ふほぉー、湯気が湯気が、あー、醤油のいい香りが、メンマがーっ
頂きまーっす
美味しい、懐かしい、美味しい
これが伝統的な東京ラーメンなんだろうなぁ、出汁よりも醤油が勝ってて
ちょっと辛いけど、それでいて濃過ぎずさっぱり、美味しいっ
そして麺、このお店は手打ち麺と謳ってある、なるほど不揃いなちぢれ具合だ
上州に暮らし始めて手打ち麺文化に慣れ親しんだオレ、何も新宿で食べなくともなぁ
なんて思ったけど、この卵がいっぱい練り込んでそうなぷりぷり感、これも旨いよなぁ


と、一心不乱に鉢に顔を突っ込んでると

なんだかお兄さん美味しそうに食べるねぇ、作りがいがあるよねぇそんな食べ方見てると
私が作ったワケじゃないけどねぇ、ひーっひっひっ

ごめん、アフロ母ちゃん、今オレ相手出来る余裕ないし

ずずっと、最後の麺をすすり終えると、その美味しさに思わず声が漏れた
旨かった・・・



美味しいに決まってるよぅ、ここいらで中華そばったら、ここ若月だよ

自慢そうに笑うアフロ母ちゃんに聞いた
歴史あるんでしょうね、このお店
歴史?そんな立派なものはありゃしないよぅ
古いだけだって、ねぇママ?ひーっひっひっひ

ひっひ、と笑いながらフェードアウトしたアフロ母ちゃん
よほどの常連なんだろうな
お金を払って雨上がりの横丁を駅に向かって歩くと
こんな猥雑な路地にも秋の夕暮れ感が漂っていた


お兄さんっ、またおいでよーっ

大きな声に振り向くと
ラーメン屋よりも小さな焼き鳥屋、そのカウンターの中でアフロ母ちゃんが笑っていた

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うーんんん
思い出横丁、奥が深そうだ
こりゃ、また来ることになりそうだな

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