ついさっきまでモルゲンロートに燃えていたカールの上には
透き通った穂高ブルーに刷毛で撫でたような雲
早立ちして稜線を目指したグループが残したテントの静けさ
ゆっくりと連泊の時間を楽しむカップルが沸かすコーヒーの香り
予定より遅れて慌しく撤収するファミリーの声
そんな朝の、がらんとしたテン場で一本だけ残った缶ビアを開ける
プシュっ
ソーセージを炙って
バケットを炙って
ゴクゴクっ、ぷふぁーっ
空が近いよな、もう夏も終わりか?静かだなぁ、あぁー、ずっとここに居たいなぁ
ぽろぽろと独り言がこぼれるテン場の朝
旅の終わりの寂しさ、夏の終わりのほろ苦さ、そんな想いが胸を埋めるひと時
さ、帰ろか
少し冷たい風を受け、ヒュッテのテラスからもう一度見上げる北穂高
また来るよ、いつもの別れの言葉を告げてトボトボ歩き出す
あれは、いつの夏だっただろうか
あの夏はもう来ないのだろうか
いつかの夏
涸沢にて




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