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さらば駅そば



誰が言ったか「日本一うまい駅そば」がある
その店がある駅は栃木県にある小山駅だ

東北本線・水戸線・両毛線、そして東北新幹線が乗り入れるターミナル駅にあって
ホームにぽつんと佇むその姿には、なぜだか郷愁を覚えてしまう



初めてその懐かしさに惹かれて立ち食いをしたのは
画像の記録では2016年、今思えばどの山の帰りだったろうか
誰かに駅まで送ってもらって、次の電車までの時間にすすったのだ

見るからに濃い出汁、なんだか乱切りに見える蕎麦
それをカウンターで受け取って一口食べては缶ビールを飲んで
いつの間にかホームと売店と自分が、その長閑な風景の一部になっていた




自分の中では、いちばん美味い駅そばは、今は無き品川駅コンコース
(当時は駅ナカだのエキュートだの、そんな言葉も無かった)
今ではベーカリー店になっている場所にあった、ウナギの寝床みたいな
狭い狭いお店「常盤軒」だった

東京出張が毎週の事になり、のぞみが品川駅に止まるようになった頃
大阪へ帰る前に、ずずっとかき込んで、のぞみに飛び乗るようになっていた

慣れない関東の濃い出汁も、いつの間にか美味しくなったのは
いつもサラリーマンでぎゅう詰め状態なお店の雰囲気と
濃い目な出汁、ちょっと太目な蕎麦の組み合わせのおかげだった気がする




なんだか、あの品川駅の駅そばの味を想い出してから、この立ち食いが好きになり
東北本線に乗る機会がある度に、途中下車してでも食べていた
そんなお店が、2022年1月14日閉店するそうだ

戦後まもない頃から、多い時にはこの駅で三店舗も営業されていた時代もあったとのこと
「高級な味を目指すのではなく(美味しい270円のそば)を目指して数十年」
そう詠われた駅そば、いや「きそば」はもう食べられない


遥か遠くなった東北本線の風吹くホーム
そこに漂う醤油の香りと電車の音と、ぽつんと佇むあの売店
そして
その気になれば、電車に乗って食べに行けていた
あの荒野に住んでいた頃のあれこれを想うと
少し胸がきゅんと

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