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祈りの道をゆく 大峯奥駈道縦走記 2nd Day


- The Second Day 2010.04.30 -

深夜に一度起き出して小屋の外で星空を見上げると
明るく照らされた月夜にも分かるほど星は輝いてる
これは明日もバッチリなコンディションだなと、満足しながらぐっすりと寝込んだ
ところが夜明け前、嵐のような音で目が覚める、風の強さが半端ではないのだ
恐る恐る外へ出るとガスで真っ白、そして叩きつける強風に恐れをなす
そりゃ、朝からお日様にっこりなんて甘くはないよな
06時までには出発したくて、一度小屋を出たが、強風に負けて舞い戻る
そして昨日の雨で濡れたままのレインウェアを着込んで06時20分出発だ
西から襲ってくる強風にカラダを煽られながら尾根を進む
朝陽に輝くトレイルはコバイケイソウが咲き乱れ、もう新緑の装いだ
今日の行程は、弥山を越え釈迦ヶ岳までの、これまた16キロのロングコースだ
昨年の秋、単独で和佐又から釈迦ヶ岳まで縦走したタイムを参考にすると
行者還岳から弥山が4.0H、弥山から釈迦ヶ岳までが6.5Hなので予定CTは11.5Hとした
このルート、何度か歩いてるので、ペース配分、危険エリア、水場を抑えてあるので安心だ
それに何よりもこのトレイル、縦走中最も素晴らしい展望なのだ

■鉄山(中央の鋭角ピーク)

アップダウンを繰り返すうちに西方向が晴れ渡り、いつしか風も弱まってきた
私より先に避難小屋を出たご夫婦を追い抜くと、もう目の前は誰もいない
一ノ垰を越える頃には陽射しも強くなる、このまましばらくレインウェア着たままで乾かせばいいか
昨夜の小屋ではザックをゴソゴソできる状態じゃなかったもんな
 
鉄山も見事にくっきりと三塚が望める
あぁ、今日も青空だ

■54靡:弥山
高塚山との分岐から奥駈出合いに向かって進むといつものように弥山が目の前に迫ってくる
この大きな大きな弥山が近付いて来るシーンが大好きなのだ
陽射しは強くなるが風は冷たい、そんな素晴らしいコンディション
今のところ好ペース、先ずはこのピークが見え始めた弥山、ここへ10時30分目標だ
■聖宝ノ宿
聖宝ノ宿辺りから下山者とすれ違い始める
きっと皆さん昨夜はあの月明かりに満足されたことだろう
しかし、多いな、さすがはGWだ、次から次へと下ってくる
聖宝八丁の九十九折れも意外と背中の重さは気にならない
やはり歩きなれたトレイルは、それだけでカラダも楽なのかもしれない
■51靡:八経ヶ岳
10時30分弥山着、うん、予定通りのCTだ、今日はイケそうだな
山頂は予想通り多くの登山者で賑わっているが、大型ザックの姿はあまり見ない
と、小休止している私の前を昨夜、稚児ノ泊でテン泊していた人がサクサクと歩き去っていった
あのペースだと今日は釈迦ヶ岳よりも先だろうな
小笹ノ宿で会った若者も今日は持経ノ宿までと言ってたっけ・・・
さすがに奥駈縦走者はタフなヒトばかりのようだ

■釈迦ヶ岳遠望

八経ヶ岳ピーク直下から望む釈迦ヶ岳
うーん、遠いな、やはり遠いな
奥駈の稜線の向こうに釈迦ヶ岳を睨んでると、先ほどのご夫婦が追いついて来た
『なんの山が見えるんですか?』
私が、釈迦ヶ岳を指差し、今日これから歩くところだと伝えると
『本当にそんなに歩くヒトがいるんですね!がんばってください』

■53靡:頂仙岳

山頂はこれまた人だかり、山名板の前では数人が居座って、カメラを出す気にもならない
振り返ると弥山の小屋、そして右手には昨日越えてきた大普賢岳
あぁ、結構歩いてるよな
少し霞んでるけど、今日は良く見渡せてるぞ

さぁ、あの釈迦ヶ岳へ向かおう
17時50分目標だ
『お気をつけて~っ』
弥山辻へ下って行く私の背中に、ご夫婦の声援がもう一度聞こえた

■50靡:明星岳
風が冷たいのはありがたいが、陽射しは強い
空を見上げるとまるで夏雲のような大きく厚い雲がゆっくりと流れる
弥山辻へ下りながら明星ヶ岳を望む
今更だが、やはりこんなカタチをしてるんだな、大きな山だ
左端にうっすらと七面山のピークが覗いている
トウヒの群れの中、汗を拭いながら進む
■45靡:七面山(東峰・西峰が猫耳に見える)
この辺りからだ
何故か私は夢遊病のようにボーッと歩くだけ、抜け殻状態になり始めていた
それに気付いたのは、ある瞬間、私は西を巻く奥駈道を歩かず
稜線上のブッシュに立っていた、あれ?ここはどこだ?あらら
奥駈は下のほうに見えてるじゃないか、こんな歩きなれた稜線なのになぁ
とブッシュを無理やり下るが何故か全身に力が入らない
更に、これはまずい!と自覚したのは、舟の垰を越えたのか
まだなのか自分で分からなくなってることだ
そう言えば、最後に水飲んだのいつだったっけ?慌ててボトルを口にするが喉を通らない
ヤバイなぁ、これはヤバイ、知らない間に直射日光にやられてるようだ
ボトルの水を頭からかぶるが、ボーッとしたカンジは拭えない
そりゃこの前まで雪の中歩いてたもんな、暑さにカラダが順応できてないんだ
■46靡:船ノ多和
ボーッと歩いてると楊子の森から単独の若者が下りて来る、ん?
こんな時間に弥山まで行くのか?心配になって声を掛ける
すると若者は、楊子ヶ宿に向かうと言う、それは逆方向だと教えると、彼は放心状態
どうやら奥駈道が東へ巻いてることを気が付かずP1693へ登り
なんとそのまま七面山へのルートを少し下り、間違いに気付いて戻って来たところだと
なるほど、それでパニクってるわけだな
そんな失敗、私も数知れずやったものだ、と苦笑い
楊子ヶ宿まで私についておいで、と誘った
■楊子ノ森

と、声を掛けたはいいが、前を行く私もフラフラ状態
きっと彼もこのオヤジ大丈夫か?と思ってることだろう
楊子ヶ宿小屋の前の様子では、結構な人数が利用しているようだ
着いてきた若者に、私は釈迦ヶ岳を目指すけど、どうするのかたずねると
彼も着いて来ると言う、今からなら18時は周るだろうから
もし途中で断念するなら、鳥ノ水(水場)の先でビバーグすればいいと教える




相変わらずペースは遅く、頭はすっきりしない、仏生嶽の横駈で若者に先を譲り座り込む
こんな状態で釈迦ヶ岳まで辿り着くのだろうか?
行動食のパンの残りを出すが、全然食べる気にもなれない
ふとザックのポケットにグミがあることに気付いた
あぁ、これは昨日の朝、D師匠が栄養ドリンクと一緒に差し入れしてくれたものだ
普段、二人とも山行にこんなもの持って歩かないのにな、と
不思議がりながら頂いたグミを一つ口に入れた
すると、そのショッぱさは全身に広がるほどの新鮮な味
あぁ、カラダは欲してたんだ、そう思うと、次から次へとグミを口いっぱいにほお張った


不思議なもので、グミを噛み続けてると次第に喉が渇く
さっきまで喉を通らなかった水が驚くほど美味しい
そして水を飲み始めると、カラダが空腹に気が付いたかのようにお腹が鳴り始める
パンの残り、ソーセージ、チーズと、行動食をバラバラ出してどんどんたいらげて行く

あぁ、昨日の水に続いて今日は行動食か・・・でもここまで酷いシャリバテは初めてだったな
水に食事、そんな基本中の基本に泣かされるなんて
D師匠の差し入れが無かったら、ここでビバーグだったろうな、師匠ありがとうございます


■両部分け

仏生嶽から鳥の水、孔雀の覗きと、残りの行程は淡々と、いやサクサクと進む
へたり込んでたのがウソのように脚が動く、背中が軽い
鳥ノ水手前で一張りのソロテントを見たが、あれは先ほどの若者だったのか?
声をかけてやれば良かったな、少し後悔しながら
暮れ始めた奥駈を力強く踏みつけながら先を急ぐ

行動食と水分で復活した私のペースは上がり、あっと言う間に両部分けだ
宗教的な意味では、これまでの縦走路が金剛界、この先が胎蔵界となる分岐点だ
ってことは、この長い長い縦走もそろそろ折り返し地点だ

■40靡:釈迦ヶ岳


馬の背の杭を掴んでよじ登る頃には空が茜色に染まり始めた
さぁ、最後の鎖だ
18時ジャスト、崖をよじ登ると、夕焼けにお釈迦様が佇んでいた
おかげさまでどうにか、ここまで来れました、二日目が無事に終わりました

『よぅ、お参り』

お釈迦様は今日も微笑んでくれた気がする




2週間前、霧氷の中デポした缶ビールと水を回収して千丈平へ
意外にも千丈平は私の貸切状態だ、あぁこの開放感
昨夜は、皆さんお休み中の避難小屋でコソコソしてたけど、今日は私の自由だ!
さっさとテントを設営すると、さっそく乾杯
今日もいろいろあったけど、予定通りのCTで目的地だ
独り乾杯を繰り返した
 
- The Second Day 16km 予定CT11.5H 実績CT11.5H -





コメント

コメント一覧 (2件)

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    奥駆道歩きの鼓動が手に取るようにリアルに伝わってきます。
    10年前という時の経過をまったく感じさせない今も変わらぬ奥駆道があると思うと
    すっかりご無沙汰の大峰歩き、そろそろ再開したいという情熱が湧いてきました。
    続編をさらに楽しみにしております。
    0

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    PASS:
    キバラーさん

    >奥駆道歩きの鼓動が手に取るようにリアルに伝わってきます

    たいへん嬉しいコメントありがとうございます
    もう10年も過ぎてしましましたが
    今も5月の青空を見上げるとこの5日間のことを想い出します
    確かに何年経とうが大峰は今も変わらず残っていますよね
    秋には再開できるよう願っています、キバラーさんもぜひに。
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