
- The 1st Day 2010.04.29 -
夜明け前、奈良に向かう国道には叩きつけるような激しい雨、そして稲光
これから縦走に取り掛かる私にとっては、何とも幸先の良くない天候だ
『なんや、大峯の神さん、来るな言うてるみたいやな?』
私が奥駈全縦走に挑戦すると聞いて、スタート地点となる金峯神社まで送ってやろうと
嬉しいサポートをして頂いたD師匠が運転席で笑う

洞川茶屋に向かって、この心地好いトレイルが延々と続くものかと思っていたが
尾根が西へ曲がり始める辺り、ちょっとしたピークを越えるのに鎖場となる
そこからは徐々に登りがキツくなり、私のペースが遅れ始めた
12時30分、予定より30分遅れ、いや本音では60分遅れで洞川茶屋だ
ここから山上ヶ岳までは何度か歩いエリアとなる
『ちょっと遅いな。体力と、陽の暮れ加減で適当なとこで寝たらエエ、ムリしたらアカン』
も一度、D師匠にエールを頂いて茶屋を後にする
大峰の巨匠と称されるD師匠に力水を頂いての奥駈縦走は、いよいよここから単独行
も一度固い握手を交わしたかったが何だか照れくさく
せめて勇ましく歩こうと意味も無く早足で茶屋を後にした
戸開(山開きの儀)を目前に、茶店や登山道の整備が行われる中進む
陀羅尼輔茶屋を過ぎた分岐、いつも直接鐘掛岩に向かうのに無意識に階段道を選んでいた
失敗だ、このルート、下山向きで若干遠回りのはずだ、しかもこのザックで階段はキツい
階段で二度もザックを降ろしての休憩、あぁどんどんロスタイム作ってるぞ
宿坊エリアでも戸開式に向けて行者を迎え入れる準備で慌しい様子だ
4月の初旬に行仙岳で出合った櫻本坊支配人の佐藤さん
ぜひ立ち寄ってくれ、なんて云われたが、外から見る限りそんな余裕は無さそう
宿坊の中を少しでも拝見したかったのだが、迷惑だろうし、先へ進む
大峯山寺本堂、現在の本堂は1,691年に再建されたとのこと
この重層な本堂、実は私はその扉が開けられている時期に来たことがない
毎年5月2日の深夜、正確には3日に行われる戸開式
三方向から人馬に乗った使者が鍵を開け、全国各地から集った行者たちを迎え入れるらしい
あと4日でこの扉が開く、その瞬間を今かと待ち受けているように本堂は静けさの中にあった
14時を過ぎて傾きかけた陽が、いにしえの奥駈道に木漏れ日を落とす
柏木までの丁数が刻まれた丁石が残る古道、なんて美しい道だろうか
この辺りで完全に歩きが遅くなるが、それは単に疲労によるスローダウンではなく
道を、森を眺めながらかみ締めるように歩いているからだ
予定よりもロスタイムが広がることが分かっていても、急いで歩くのがもったいない
そんな気持ちになるほど素晴らしいトレイルが続く
山上ヶ岳から30分ほどで、小笹ノ宿だ
ここは、まさに宿跡だ、石畳、石垣が今も残り、大きな宿が賑わったであろう事が伺える
避難小屋は小さく、4名くらいしか入れないだろうか、小屋の前には小川が流れ
豊富な水量に驚かされる、なんて素晴らしいロケーションだろう
狼平を小さくしたような、そんな光景に私は一目でこの地が気に入った
美しい森の中を進むと再び女人結界門だ
五番関、レンゲ辻、清条大橋、そしてこの阿弥陀ヶ森
現在も女性の入山が禁じられている山上ヶ岳を囲む4方向4箇所にある女人結界門
これで全ての門を潜ったことになる
その威圧的な門と対照的に、阿弥陀ヶ森は夕陽を浴びて益々美しくなって行く
『今日の行程な、きっと大普賢までの登りが一番キツイぞ』
地図上では阿弥陀ヶ森から大普賢までダラダラした登りだと読んでいたので
そんな、朝のD師匠の言葉を笑って聞いていた、が、その言葉通り
大普賢までの登りで体力を使い果たした私は、知らず知らずのうちに西日に汗をかき
水分を取りすぎていたのだ、これは深刻な問題だ
何故ならこの先水場は行者還岳までない
その事実に気付いた私は、水太覗で途方に暮れた
もう17時、予定より1時間遅れだ
この時間帯の1時間は大きいぞ、ヤバイぞ、どーする?
水不足なんて初歩的なミスを初日から起こしててどうするんだ!
暮れなずむ弥山を眺めながら佇んでると、余計に心細くなって来る
と、独り途方にくれる私を、稲村ヶ岳からの一瞬の冷たい風が通り過ぎる
その冷たい風は、西日に照らされアツくなっていた頭を冷やしてくれた
よーっく考えろよ、17時?、1時間遅れ?とすると連続する鎖場を経て
七曜岳を越えるのは何時だ?
18時過ぎ、遅くとも半頃だろ?このところの陽の高さだと18時半までは明るいぞ
急げ!
残り少ない水がザックでチャポチャポと波打つ音を背中に駆ける
一度開き直るともう何の心配も無い、鎖場以外は駆けて行けばいいのだ
陽があるうちに駆ければ、それでいいのだ
自分の中で一つのポイントとしていた七曜岳、七ツ池の鞍部からの登り返しでまた大汗をかく
ここで、残りの水分0,5L+αのα分を飲みきった
さぁ、これでもう行者還までは何があっても行かなければならないぞ
ま、最悪ザックの底には缶ビールもあるし・・・
そんなバカなことを思える余裕は、やはり何度も歩いたトレイルだからこそだ
と、七曜岳のピークから稲村を望むと
あぁ、なんて美しい夕陽だ
キケン地帯を明るいうちに終えた安堵感が全身を包み込み
ここまで駆け降りたカラダを冷やしながら夕陽を浴びながら、しばし佇んだ
さ、行こか、あとはゆっくり小屋を目指すだけだ
七曜岳から一度下りきり、鞍部から登り返す辺りからヘッ電灯火
もう小屋はすぐそこ、その余裕が星明りに照らされた尾根のアップダウンさえ楽しくさせる
もう頭の中は缶ビールの泡が溢れかえってるのだ
暗闇の中、ザラつく斜面の水場でプラティパスを満たすと避難小屋へ駆け込んだのは19時20分
予想に反して小屋には人が居て、小部屋は満員?大部屋は1階に二名、2階にも二名くらいか?
『こんな時間にすみません、一人お世話になります』
声を掛けるが、皆さん就寝中、そして 『 メイワクなヤロー来たなぁ 』 的なムードが濃厚に漂う
その気配を敏感に捉えた私は、仕方なく正面入り口の土間で隙間風に煽られ食事の準備
寒さに振るえながら独り寂しく乾杯、あぁ~あ、こんなシュチュエーション想定外だ
でも、とりあえず初日は終わったぞ
- The First Day 21km 予定CT12H 実績CT13H-















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