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黒部の太陽


以前から観たいと思っていた日本映画「黒部の太陽」をやっと観ることが出来た
「裕次郎の夢全国縦断チャリティ上映会」と銘打って、なんと44年ぶりの上映だそうだ
これだけの有名な映画が44年もの間封印されていたのは、石原裕次郎さんの
「こういう作品は、大きなスクリーンで観てほしい」という意思に基づいて、公開以来
ビデオやDVDなどパッケージ化されず、ノーカット版はわずか2度のイベントで上映のみ
TVも未放送、それ故映画ファンからは“幻の大作”と呼ばれていたそうだ
 

ちなみに、今年NHK-BSで放送されたのは海外向け短縮版(2時間15分)
今回上映の完全版は3時間15分で、15分の休憩を挟んで2部構成での上映だ

私の一番の目的は、ほぼ50年近く前の北アルプス、それも黒部がどんな姿なのか
それを観たかったのだ、もちろん名画として名高い作品自体にも、戦後の日本を建て直した
男たちの姿にも興味はあったけど。

でもイントロダクションに銀幕に浮かび上がるテキストで、そりゃ甘いかなと思わされた

-敗戦後の焼け跡の中から文明を築いていく日本人の勇気の記録である-

この映画の主題はそうだったのだ、だからこそ東日本大震災のチャリティとして
44年の封印を解いての上映だったのだ、そう思うと、なんだか山の風景なんて・・・

そしてオープニング、黛敏郎の雄大なる音楽をバックに、画面いっぱいに広がる山
雲海に大きく浮かぶ、針ノ木岳に朝陽が登って行くシーンにまず圧倒される

黒部川第四発電所、通称「黒四」建設のためにトンネルが必要なこと、その工事に関わる
ことになった人物と背景描写といった序章的なチャプターの後、次に圧倒されたのは
なんとも意外なシーン、それは大町から登山スタイルで歩き始める石原裕次郎の姿だった

カッコいいのだ、もちろん古臭いスタイルだ、なのに、めちゃくちゃカッコいいのだ
針ノ木岳を颯爽と歩く姿なんて、思わず惚れてしまった?ほど
さすが昭和の大スターだよなぁ、なんて今さらながらに思えたのだ

次は、映画的には最も盛り上がったシーン、工事が破砕帯にぶつかり難航する
その現場を視察する工事責任者の三船敏郎、現場監督的立場の石原裕次郎が突然の
出水に巻き込まれ・・・、このシーンは、映画を観終わった後に知ったが、撮影現場の
事故により、まさに偶然撮影出来たシーンとのこと、CGなんて言葉すらなかった時代
役者どころか、カメラマン、監督まで流されたと言う水量は、観る者をも飲み込む迫力であった

映画全体としては、ストーリーは単純明快、全ての登場人物がトンネル貫通に懸けるだけ
それぞれの私利私欲だの、思惑だの、裏切りだの、どんでん返し、ギミックは一切無い
あるのは、出演する俳優陣の重厚な演技、久しく忘れていた昭和の日本映画特有の「間」
そして言葉では表現できない、「圧倒的な力強さ」だ

それはこの映画自体が「勇気の記録」そのもの、だからこその力強さだろう
こんな重厚で膨大なスケールの映画、現代の日本には発想力も経済力もマネジメント力も
そんなものを含めて「作る勇気」すらないだろう
現在の日本、この混沌とした、どこへ向かうのかも不透明な日本と違って
間違いなく昭和の日本には、向かうべき姿と「勇気」があったんだ、と
なんだか、胸が熱くなる想いが残った

感動のエンディングに呆然としながら虚ろに目で追うエンドロール
そこに浮かび上がる名前たち
いい俳優ばかりだ、声の大きさが違う、表情が強い、皆さん存在感が大きい

・・・でも、でも、もう皆いない
1968年に作られた映画、その出演者達ほとんどが、もういない人達なのだ
トンネルを掘った人たちだけでなく、その後、それを物語として残した人たちも

みんな、みんな、地上の星だ

50年前の北アルプスを観たい、なんて気は吹き飛んで
男たちの勇気の物語、観終わった後の切なさに、しんみりと浸りきった
そんな映画だった

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コメント

コメント一覧 (2件)

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    気合の入った映画評でございますな。
    若いころに観ておりまする
    昨年もBSで観ましたが、なんだかあっさりしているなあと思ったのです。なるほど、短縮版だったのですね。

    電力会社の技術屋だった父は、ダム完成前に高熱隧道とやらを通ったと言ってました。
    まさか息子が大人になってから、黒部ダム目がけて滑り込むなどとは、思ってもみなかったことでしょう。

    日本の再生に尽くした一人であった、父を思い出す映画です。

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  • SECRET: 0
    PASS:
    風花老師さま

    おぉ、不死身の老師さま、わざわざこんな田舎まで
    ありがとうございます(笑

    >、ダム完成前に高熱隧道とやらを通ったと言ってました。

    あぁ、ここにも地上の星がいらしたのですね
    そうですか
    きっと父上からいろんなお話を聞かされたことでしょうね
    一本の映画で、いろんな想いを持つことが出来る
    やっぱ名画は素晴らしいです
    コメントありがとうございます
    0

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