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僕に踏まれた町と僕が踏まれた町

1月のある日、大阪へ逆出張した翌日に所要で休暇をとった
朝早くから動いたおかげで、所要は午前中で終わり
さぁて、午後からどうしよう
先ずはランチだ、何にしよう

頭に浮かんだのは、懐かしき街、懐かしき味
あのお店の柔い細うどん食べたいな
そうだ、そうしよう

数年ぶりにある街へと

その街は生まれ変わっていた
駅前には新しいビルが建ち、しゃれたテナントが入り
路地裏のような通りも高層マンションに囲まれて
自分の知ってる街では無くなっていた

なんだかなぁ

何度か同じため息をこぼしながら、お目当てのお店に行くとシャッターが下りたまま
記憶の通りだと、土日は休みだけど平日の午後いっぱいオープンしてるはず

もしかして、もうお店やってないのかも

ご高齢だった店主の姿を思い浮かべながら、通りを歩くと
あの昭和テイスト満載の「力餅」までリニューアルされている
通りに面したガラスのショーケースに並んだ二色のおはぎ、あの姿ももう無い

なんだかなぁ

それでも変わらぬモノもある、これまた懐かしきパン屋さん
嬉しいなぁ、まだやってるんだ、じゃアレ買って食べようか

 「あら、お兄さんお久しぶりやな。ピロシキ?何個や?」

お店のお母さん、誰かと人違いしてる様子だけど適当に合わせる

 「あぁお蕎麦屋さんかいな、まだお元気でやってはるで。今日は休みや」

そうだったんだ
安心したよ、あぁ良かった、じゃまたいつか食べに来れるよな

なんてことがあった日から二ヶ月
今度の逆出張は大阪市内のとある場所で二時間ぽっかりと時間が空いた
ふと、あのお店を思い出すと脚は勝手に動いていた

どうかな、やってるかな
そわそわしながら、通りに入ると、暖簾が出ていた

懐かしきガラス戸をガラガラっと開けると
懐かしきお母さんの笑顔

 「はい。いらっしゃい」

この街は20代から30代にかけて8年間お世話になった街

初めて受け持ったクライアントに仕事の面白さを教わり
ときに厳しく仕事で泣かされ、アルコールに慰められることを覚え
怖いものや将来の不安なんて全然無くて
人に笑われるほど仕事に没頭し、人に呆れられるまで遊びあかし、そして恋をした街

この街で大人になった
そんな懐かしき街の懐かしき味

オーダーは「天とじ、ほそ、大」
この呪文の意味は「天ぷら卵とじ細うどん大盛り」だ
ほんの5分ほどでやって来た懐かしき姿

 「お久しぶりですね。Aさん・・・年末やったかなぁ来てはりましたよ。」

はい?お母さんオレのことを覚えてくれてるの?
しかもAさん?Aさんって、あの鬼軍曹の!

 「鬼軍曹?うまい事言わはるわぁ(笑)よぅご一緒されてたのにねぇ」

テーブルの横に立つお母さんと、Aさんのこと、この街の移り変わり
そんなこと、ぽつりぽつりと、話しながらうどんを頂く

何も変わってないお店
あの頃と同じ空気に同じ丼
卵とじの美しさ
やわやわな細麺
やさしい、やさしいお出汁の香り

すべてがあの頃のまま何も変わらない
だからこそ
なんだか自分だけがいつの間にか疲れ果てたオヤジに変わった気がして

・・・なんだかなぁ

こんなため息が聞こえたら、鬼軍曹はあの頃のように怒鳴ってくれるだろうか

いろんな思いと懐かしき味に、ちょっと胸が詰って
最後のほうは味も分からなくなって
お母さんの笑顔に、ただうんうんと頷きながら、ごちそうさま

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どこにでもある、とある街の通り

僕に踏まれた町と僕が踏まれた町

駅前が再開発されようと
高層マンションに囲まれようと
そして、、、自分がどんなに変わろうと

この街と、この丼は、どうかこのままで

コメント

コメント一覧 (10件)

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    大阪でぇ〜生れた〜♪の歌が頭の中ぐるぐる。
    お母さんのうどん出汁の香りがぷ〜んと画面の向こうから。
    ええ話やぁ…(´•ω•̥`) 0

  • SECRET: 0
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    どうして、うどん話に涙するわたしなん?
    今朝のマッサンの涙の続きだよね、この涙は…

    懐かしい場所
    懐かしい匂い
    懐かしい風景
    色んな事に涙もろくなってきてしまった。

    兄さんを形作った街かぁ
    お店のおばさん、よく覚えていてくれたね。
    きっときっと◯◯してたんだろねぇ。
    キュンキュン。 0

  • SECRET: 0
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    なんだかこのコメント欄のならびを見ていると
    とりあえず、何か書いておきましょうと思うわたし。

    うんうん、恋した街か~
    痛い目にもあうし、恋もするし、怒られるし
    そんな街に行って来たんだね。
    で、なにを踏まれて踏んだんだ?

    0

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    スロトレさん、はじめまして。

    私もこの界隈で学生時代を過ごしました。
    といってもたぶんスロトレさんがいらした頃より
    もっと前のことですけど。(今は東京に住まいおります)

    当時はあのごちゃごちゃした街並みが好きではなく、
    今まであまり懐かしく思い出したことは無いのですが、
    そうですか、再開発ですか。平凡な街に変わってしまったのでしょうね。

    路地の「さてん」(喫茶店をこう呼んでました)、きたないけど美味しくて安い中華料理屋、コンパで盛り上がった居酒屋の2階、パチンコ屋の騒音、古本屋のおっちゃん。

    なんや、けっこう懐かしがってるやん!
    (せやからコメントする気になったんやもん)
    思い出させてくれてありがとう。 0

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    cyu2さん
    あー、、、ですよねー
    でもね、ブログ記事のタイトルにしても
    「青春のかけらを置き忘れた町」 じゃ
    ちょっといくら何でも
    (・∀・)キュンキュン 0

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    palletさん
    でしょ、これがね、この姿に会いたくて会いたくて
    私の麺類好きの原点だと思ってます
    この卵とじが出来ないかと何度チャンレンジしたことか^^;

    >恋をした街か…

    そこは、ほれ
    (´・ω・`) 0

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    矢車草さん
    ま、マッサン?何で朝ドラとリンクするの(^^;)
    涙もろいにもほどがありますよー
    (´・ω・`)
    でも、こんなうどん話にウルウルまでしてくれて
    どうもありがとうです
    0

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    yakoさん

    >とりあえず、何か書いておきましょうと思うわたし

    いやいや、お気遣いコメントは結構ですよ^^;

    >で、なにを踏まれて踏んだんだ?

    いえ、まぁ、特に意味は無いのです
    当時大好きだった中島らも先生の自伝青春小説
    「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」
    そのまんまパクっただけなので、って知らないですよね(^^;) 0

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    pomさん

    いや、これは何と嬉しいコメントでしょうか
    そうですか、そうですか
    確かにごちゃごちゃしてますよね
    さてん?「一番館」は今はビルに生まれ変わってますが
    「セーヌ」は今も営業されてます
    美味しくて安くて旨い中華は、名前忘れましたが
    「一番館」の裏手にありましたっけ・・・
    街とか通りとかって、いいものですよね
    誰かの想い出とリンクしてるからでしょうか
    こちらこそ、いろいろ思い出させて頂いてありがとうございます^^ 0

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